混沌のAndroid端末
開発には細かいチューニングが必要だった
──2011年夏モデルでPalette UIが搭載されているのは4機種(MEDIAS WP N-06C、AQUOS PHONE f SH-13C、P-07C、GALAXY S II SC-02C)ですが、それぞれ端末のハードが異なる状態で統一を図るのは難しくなかったのでしょうか?
松本 難しいですね(笑)。まず、端末の処理能力が異なることが挙げられます。たとえば、アプリケーション一覧をスクロールしたときの速度が機種ごとに大きく違うので、チューニングを施すことによって機種で大きな差にならないようにしています。端末を実際に操作してみて、サクサク動くか、快適かというようなことを評価しながらチューニングを施しています。
──端末の性能が違うことが、大きな差になるということですか?
松本 端末の性能ということもありますが、大きな理由が、AndroidのOSに対してメーカーの実装差があることです。同じ命令を呼び出しても動き方が違うということがよくあるため、それぞれの端末での調整や動作確認は必須となるのです。例えばタッチパネルは、各端末でハードウェアの仕様も異なりますし、そのドライバや操作に対するチューニングも異なります。一言で「Android端末」といっても、メーカーによっては別物のハードウェアであるといってもいいほどの違いがあるということです。
──今回の4機種のうち、標準でPalette UIが有効になっているものと、そうでないものの差はあるのですか?
松本 これは、端末の開発状況とPalette UIの開発タイミングのギャップです。当初からPalette UIを組み込む方向で開発を進められた端末ではデフォルトで組み込めていますが、そうでない端末は途中から搭載できるかどうかを検討しています。また、端末のコンセプトとの関係もあります。たとえば「F-12C」のように、そもそも独特のUIを搭載し、それが端末の最大の特徴という機種もありますから、それはそちらを優先する方向にあります。
──Palette UIがカラフルなのは、女性に向けたアピールですか?
松本 いや、特にそういう意味ではありません(笑)。グループの識別性のためです。ユーザーがいち早く目的にたどり着くための色分けです。なお、各グループの色はユーザーが自由に変えられます。
──「Palette」という名称の由来はこのカラフルさからですか?
松本 カラフルな色合いという意味もありますが、ユーザー自身でアプリの並び順やグループをアレンジしていただいて「自分色に染める」という意味合いもあります。
──今後も複数メーカーに働きかけて、ホーム画面をPalette UIで統一していく予定でしょうか?
松本 2011年冬モデルからPalette UIを積極的に導入してUIを統一していこうという発表はしていますが、もちろんメーカー独自のUIも残していきたいと考えています。また、横並びのデザインだけではなく、Palette UIを採用しつつも、機種に合わせてある程度そのカラーが出るようにもしていきたいと考えています。
──今後、PaletteUIはどのように進化していくのでしょうか?
松本 今後もスマートフォン向けに、弊社独特のサービスが提供されることと思いますが、それらを利用するときに、最も使いやすいホームアプリとなるように、機能の改善を進めていきます。また、デザインに関して細かいカスタマイズ性を追求していきたいと考えています。今後のPalette UIの展開に期待してください。
──興味深いお話、ありがとうございました。
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Android搭載スマートフォンというと、独自機能、独自UIを搭載して他端末との差別化を図る傾向にあるが、そこに対してあえて「キャリアとしての統一感」を付加させようというこのPalette UI。
今後はホームアプリとして、よりカスタマイズ性に富んだ機能向上に期待したいが、現バージョンでも実際の使用感は上々だ(筆者はGALAXY S IIにて使用中)。フィーチャーフォンからスマートフォンへ移行したばかりでまだ操作に慣れないユーザーは一度触れてみることをオススメしたい。
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