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出遅れた日本の「電子教育」スピードアップめざす

KDDIのスマートフォン、茨城で高校生の“教科書”に

2011年07月27日 19時00分更新

文● ASCII.jp編集部

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慶応義塾大学 中村伊知哉教授 講演詳細

 日本政府は昨年、2020年までに全ての小学生が電子教科書で学べる環境を整えるよう閣議決定したが、民間からすれば遅い。せめて2015年。小中学生約1000万人が最終的なターゲットに、教材を含めた産業として立ちゆくようにしたい。市場規模は約4兆円。総務省は昨年、全国10校で実証実験を開始している。今年からは文部科学省も加わり、教材開発に加わっている。全生徒と教員に1台ずつPCを配布、電子黒板と無線LANを活用する形で実験をしている。だが、PCの普及率は生徒6人に1台。

 韓国は動きが早い。「すべての小学生に電子端末を」の目標は2013年。政府では教室と家庭のネット環境を4Gにするという動きもある。法律も改定し、デジタル教科書に法的な地位を与える。日本で教科書の定義はまだ紙の図書だけで、議論が始まっていない。南米ウルグアイで、すべての小学生にインターネット端末を配り終えたのは2009年のこと。使用しているのは2001年にマサチューセッツ工科大学が開発した“100ドルPC”で、設計したのはアスキー創業者の西和彦さんと私(中村教授)。

 当時、日本政府は相手にしなかった。「政府をあてにせず、民間の力で教育を開発してきた」。10年前の状況がようやく今につながっている。今までは先生が前に立ち、知識を届ける“放送型”の授業。それが、みんながつながり発表していく“ネット型”の授業になるのではないか。

 電子教育は、日本の強みを活かす道にもなる。特に若年層のユーザーに期待している。10年前から(高校生たちは)親指でコミュニケーションをとった。このような文化は他の国にはない特徴。千年前、日本の女性が漢字をもとにかな文字をつくり、女流文学をつくった。そこから千年経ち、今度はケータイ文字。いま世界のブログで使われている文字の37%は日本語、35%の英語を抜く情報発信国になっている。

 現在、高校生の98%がケータイを持って、約6割がケータイで調べものをしたことがある。京大の入試カンニング事件もその1つ。彼がやったことは(皮肉にも)文科省が力を入れている「教えあい、学びあい」に近い。次の時代の1つのモデルになるのではないか。このこと(カンニング事件)は同時に、現在の社会がどんな人材を育て、選抜していくのかが不明瞭で、「社会が(現象に)追いついていない」ということなのかもしれない。今回のプロジェクトはそれを見直す1つのきっかけになってほしい。

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