長きに渡って使われたISAバスの登場
このXT Busを拡張する形で登場したのが、「IBM PC/AT」で登場した「ISA Bus」である。IBM PC/ATはCPUに「80286」(当初は6MHz駆動、後に8MHz)を搭載しており、CPUが扱えるバス幅も16bitに増えている。
このIBM PC/ATでは、メモリーも汎用バスとは別のバスに接続したほか、汎用バスもXT Busのままでは幅が足りないということで、XT Busを8bit分拡張して16bit幅となった。動作周波数は、こちらもCPUにあわせて最終的に8MHzになっている。このXT Busを拡張したものが、ISA Busとして以後15年近くにわたって使われることになった。
ちなみに、IBM PC/ATが登場した当時は、このバスは「AT Bus」と呼ばれていた。これがISA Busという名称になったのは、後述する「EISA Bus」の登場時点になる。
さて、このISA Busは「拡張カードを作るのが簡単」かつ「そこそこの性能が出る」という利点があり、猛烈に普及することになる。しかも、いろいろ制限はつくものの「意外に拡張性がある」という点が評価され、産業用などでは今でもまだISA Busがごく一部で使われていたりするほどだ。
ただし、価格はともかく「そこそこの性能しか出ない」「拡張性はあるけど制限が多い」バスでもあったわけで、CPUの性能が上がったりシステムが複雑になったりすると、こうした点が問題になってきた。
MicroChannelとEISAバスの対立
ISA Busの限界を見越してIBMが投入したのが「MicroChannel」(MCAバス)であった。しかし、性能や拡張性はともかくとして規格がオープンではなく、利用にはIBMにロイヤリティーを支払う必要があるという点が反感を買い、結局ほとんど普及することはなかった。
これに対抗して、PCベンダーの業界団体も独自に、ISAをベースに拡張した「EISA Bus」という、32bitの拡張バスを定義した。こちらはXT Bus/ISA Busとの互換性を維持したために、性能そのものはISAの2倍と、あまり性能改善には役立っていなかった。そのため、結局サーバー向けなど一部の用途に使われた程度に終わった。ちなみに先ほども触れた話だが、ISA Busという定義はこのEISAの仕様を定めるにあたって、「元になるISA Busの仕様を定めないと都合が悪い」という話からでき上がったものである。
こうした経緯もあり、1990年頃から水面下で、次世代の汎用I/Oバスを策定する動きが始まった。これは「PCI-SIG」という団体で、その成果は後に「PCI 1.0」として1992年にリリースされることになる。だが1989年頃からすでに、「バスの帯域が足りない」という問題は、特にグラフィックスカードでは明確になりつつあった。
これを解決するため、チップセットメーカーの米OPTi社やいくつかのベンダーが、独自のローカルバス仕様を策定して実装する、なんて動きもあった。独自といっても、実装のほとんどは(当時主流であった)「Intel 486」のバスをそのまま引っ張り出して接続するという形だった。最終的にこれは、「VESA Local Bus」(VL Bus)として標準化されることになる。
ただし、VL Busはいろいろと無茶な規格で、マージンも少ないし拡張性にも乏しかった。また486の信号線そのままなので、CPUが「Pentium」に移行すると、チップセット内でわざわざPentiumの信号を486の信号に作り変えるという馬鹿げた行為が必要になった。
こうした問題を解決したのが、1993年に登場した「PCI Bus」である。ところが、「PCI Bus 1.0」はいろいろと仕様のバグや曖昧な点が多く、このあたりを修正した「PCI Bus 2.0」がリリースされて、やっと普及が始まるようになった。このPCIが本格的に普及を始めた1994年あたりには、VL BusやEISA Busは市場から姿を消している。
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