本連載「Apple Geeks」は、Apple製ハードウェア/ソフトウェア、またこれらの中核をなすOS X/iOSに関する解説を、余すことなくお贈りする連載です(連載目次はこちら)。
UNIX使い向けを始め、Apple関連テクノロジー情報を知りつくしたいユーザーに役立つ情報を提供します。
日本語入力システムの現状
OS Xの日本語入力システム(日本語IME)といえば、標準装備の「ことえり」は変換精度が今ひとつで、特に文章をつづる機会が多いユーザーからの評価は散々。OS X 10.3(Panther)で登場した「ことえり4」は、約28万語の基本辞書を備えるなど大幅な改良を受けたものの、「ATOK for Mac」など商用日本語IMEとの位置関係に変化はなかった。
商用日本語IMEにしても、ATOKはWindows版の開発が先行しており、OS X版は最先端とは言い難い。もう一方の雄とされていた「egbridge」は、2008年1月に開発を終了してしまった(後に後継の「かわせみ」が登場した)。
このように、今ひとつ活気に乏しかったOS Xの日本語IMEだが、OS X 10.5(Leopard)で状況が変わった。文字入力フレームワーク「Input Method Kit」(IMKit)が新たに提供され、アプリケーションとIMEエンジンの通信を任せることが可能となり、開発者はかな漢字変換サーバー(日本語入力の場合)の開発にのみ注力すればよくなった。
実際、Leopard以降のOS Xにおける日本語IME開発は、IMKit登場以前に比べ活気を取り戻しつつあるように思える。たとえば「AquaSKK」や「Social IME」などオープンソースソフトウェアの日本語IMEは、いずれもIMKitを使用している。Googleの「Google日本語入力」もまたしかり、IMKitの恩恵を少なからず受けているソフトウェアだ。
一方、今夏リリース予定のLion(次期OS X)がそうであるように、今後はOS XとiOSの垣根が低くなることが予想される。App Store/Mac App Storeではシステムレベルで動作するソフトウェアが許可されないため、現状日本語IMEを出品・販売が許可されないという悩ましい問題はあるが、IMKitそのものあるいは最適化版がiOSに実装される可能性がないわけではない。そうなれば、開発が一気に活気づくことだろう。
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