ソニーから、光学30倍のズームレンズを搭載する「サイバーショット HX」シリーズの最上位機種「DSC-HX100V」(以下、HX100V)が発売された。一昨年に発売された「HX1」の後継機にあたり、一眼レフ風なスタイルを踏襲している。
コンデジで超望遠撮影する魅力
HX100Vは、この春に発売されたほかのサイバーショット同様、新型の1620万画素1/2.3型裏面照射型CMOSセンサー「Exmor R」を搭載している。基本機能に関しては「WXシリーズ」や「TXシリーズ」とほぼ同じ機能を搭載し、さらにマニュアル撮影機能を搭載している。
本体サイズは幅121.6×奥行き93.1×高さ86.6mmで、撮影時の重量は約577gとなっており、コンデジと呼ぶには少し大柄で、携帯性に難はある。ただし、高倍率ズームレンズ搭載のコンデジは、デジタル一眼ほどの高画質は必要なくても、ある程度以上の望遠撮影を求める人には人気がある。
搭載されるレンズは「ツァイス」ブランドの「バリオ・ゾナー」。27~810mmの焦点距離に対応し、開放F値は広角側でF2.8、望遠側でF5.6となっている。望遠だからといって極端に暗くなるわけではない。
最短撮影距離は、広角側でレンズ前1cm、望遠側では200cmになる。倍率で3倍くらいまではかなり近寄って撮影できるが、3倍を超えたあたりから最短撮影距離が大きく離れてしまうので、近接撮影では注意が必要だ。
焦点距離で810mm相当と言っても、どれくらいアップになるのか分かりにくいだろう。人によって差はあるが、300mmあたりが肉眼で凝視したときの感じに近い。ということで、27mmと810mmで撮り比べてみた。
色の多い被写体でも色収差は目立たず、かなり高画質な画象が撮れる。広角側から望遠側までかなり高解像力だ。
また、レンズシフト式手ブレ補正機能がかなり強力で、フレーミング中はブレながらになってしまうがシャッターボタンを半押しにするとピタッと止まってくれる。気を抜いて構えて撮ってしまえば簡単にブレた写真になるが、気を引き締めてがっちりホールディングすればかなりブレの少ない写真が撮れる。
デジイチで同様の撮影をしようと思うと、超巨大で重いレンズを担ぐことになる。しかしHX100Vなら片手で気楽に持ち運べる。撮影位置を探すのにも気楽に走りまわることができる。
上の作例の白い鳥も、最初は池の反対側で見つけたが、光線具合を考えて逆光になる池の反対側に移動。デジイチ+超望遠レンズを持っての移動なら、かなり体力を消耗したと思われる。
特殊な機材を用意しなくてもこんな写真が撮れるのが便利なところだ。もうひとつ、コンデジならではの利点はシャッター音。ダイサギはカメラ慣れしているようで、周りに人がいて騒いでいても気にしないで佇んでいてくれたが、途中見つけた猫を撮ったときに「そういえば以前、デジイチで撮ったときにはシャッターの音に驚いて逃げてしまったな」と思い出した。少し離れればほとんど気にならないシャッター音なので、動物撮影でもかなり重宝するだろう。
ちなみに、デジタルズーム機能も備えていて、画質は落ちるが最大倍率120倍ほどの望遠撮影も可能だ。
APS-Cサイズを採用するデジタル一眼では、光学30倍ともなれば焦点距離800mmや1000mmクラスのレンズを使用する必要があり、レンズ単体で4~6kgの重さになる。さらに値段も数十万レベルになってしまう。もちろん、レンズの口径が大きく違うので、画質においては比較にはならないのだが、5万円前後、500g前後と値段も重さも1/10以下で、同様の超望遠撮影ができるのはかなり便利だ。