朝日航洋は、ヘリコプターやビジネスジェット機の運航を行なう航空事業と測量やGISなどの空間情報事業を展開している。グループ7社のITを束ねる情報システム部の3人に、「クラウド時代の製品・サービス選び Vol.1」を読んでもらった。
結局は人に行き着くのであまり苦労はない
今回お話しをお聞きしたのは、朝日航洋の情報システム部のお三方。情報システムの関わりが長いこともあり、以前取材したときは、情シスの方は製品選定のためにここまで考えるのかと感嘆した覚えがある。大震災の影響で、同社のヘリコプターが被災地で忙しく働いている最中、時間をとっていただいた。
まず情報システム部 部長の沼田秀樹氏に、昨今の情報システムでの製品やサービス導入について聞くと「管理部門全体として品質、コスト、納期の3点を重視しています。ITってやはりお金がかかるので、短期間で投資を回収できるかを考えなければなりません。あと、仮想化やクラウドのような新しい技術がどのように自分たちの業務にマッチするのかを見極めるのも重要です」という答えが返ってきた。こうした点を考えず、業務にそぐわないIT導入を行なうと、かえってユーザーから不満が出たり、コストがかかってしまう。
こうした賢いITの導入のためには情報収集は欠かせない。沼田氏はその方法について「展示会で名刺を置いてきて営業の人に話を聞くとか、出入りの業者さんに調べてもらうということは多いですね。あとはWebサイトでキーワード検索して調べます」と語る。また、同じく情報システム部の松本康二郎氏は、「日経パソコン、日経コンピューター、日経ネットワーク、日経SYSTEMSの4誌を定期購読しているので、電車の行き帰りで読んでいます」ということで、雑誌の情報も重視しているという。また二川義信氏は、「とにかくサイトに登録していて、感性に訴えるものを集中的に調べます。池袋にオフィスがあったときには、営業マンがひっきりなしに入ってきましたので、情報は待っていても入ってきましたが、今は能動的に取りに行かないと難しいです」と話す。
一口にWebのメディアといっても、その数は多く、ブログなども含めると過剰ともいえる情報供給量だ。しかし、「Webは百科事典だと思っています。ネットは文字面だけなので、情報収集においては便利ですが、浅いと思います。登録しておいても面白くなければ切ってしまいます」(沼田氏)と割り切っている。各人ともWebメディアや紙媒体、そして人をうまく使っているので、情報収集において意外と苦労はないという。「人に話を聞くと、情報だけではなく、経験値が付加されます。これがけっこう重要です。用語の意味はもちろん、弊社に導入したらどうなるか、質問を切り返すことで、話が深掘りできるんです」(二川氏)とのこと。最終的な製品・サービス選びにおいて、SIerやベンダーの日々の営業活動がきわめて大きな役割を果たしているわけだ。
クライアントではなくユーザーの目線が欲しい
さて、お三方にはあらかじめ「クラウド時代の製品・サービス選び Vol.1」を送付させていただいたので、感想を伺ってみた。沼田氏は、「世間はクラウドって騒いでいますが、自分のなかではまだまだ消化しきれていませんし、どのように自社のシステムで適用できるかわかりません。その中で、同書はクラウドのセキュリティが一番参考になり、よく読みました」と語る。
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クラウドからサーバー、セキュリティまで失敗しないIT導入をサポート
「クラウド時代の製品・サービス選び Vol.1」
- 著者:TECH.ASCII.jp編集部
- 定価:1,280円 (本体1,219円)
- 発売日:2011年2月18日
- 形態:A4変 (112ページ)
- ISBN:978-4-04-870370-3
- 発行:アスキー・メディアワークス
- 発売:角川グループパブリッシング
- 目次:IaaS導入のベストチョイス/デスクトップ仮想化のすべて/知っておきたいクラウドのリスクとセキュリティ/失敗しないサーバー選びのポイント/仮想化&クラウド時代の最新大学事例/IBM CloudBurst完全解剖/最新製品レビュー(ヤマハ「NVR500」、フォーティネット「FortiGate-60C」、ALSI「InterSafe SecureDevice」)
松本氏は「社内でもクラウドにすると安くなるんでしょう?と聞かれることが多いので、本当に安くなるかどうかは興味がありました。その点、このムックではけっこう勉強させてもらったと思いました」という意見。ただ、全体的に用語が難しいので、脚注等でも解説を付けてもらいたいという注文もあった。
一方、二川氏は「ユーザー事例なども掲載していますが、基本的にはクライアント側の立場の本だと思います。もう少しユーザー目線の製品やサービス紹介があれば、購入する人も増えるのではないでしょうか?」というなかなか厳しい意見だ。確かに広告収益を主にしたWeb媒体の記事を転載した本だけに、広告的なメッセージが目に付くというのは、否定できない事実だ。読者目線とクライアント目線をいかに両立できるかが、こうしたムックを展開する上での大きな課題といえる。
今後、必要な情報は、やはり災害対策やBCPだという。「関東直下型の地震を想定したBCPで、10年以上前から基幹システムをデータセンターに移行する計画を立てていましたが、費用対効果の点からなかなか実行できませんでした。4年前から順次移行していますが、まだ途中段階のため、計画停電への対応や地方に災害が起こった場合に備えて、再度計画を練り直しています」(沼田氏)とのことで、震災の影響でITの見直しを迫られているという。こうしたことも含め、クラウドやデータセンターの導入を進め、運用コストを下げていくことを長期的に計画しているとのことだ。
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