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スイッチでデータセンターが変わる 第68回

NX-OSも1万社、UCSも4000顧客がすでに導入

NexusもUCSも新しい!シスコのデータセンター革命は続く

2011年04月28日 09時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp 写真●曽根田 元

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NexusにフルL3機能を搭載した新機種

 さて、ここまでの前提を踏まえた上で、今回のアップデートをより技術的に解説していこう。まずはユニファイドファブリックを実現するNexus 3000と5000シリーズの新製品だ。40GbEの搭載やL3対応が大きなポイントとなる。

 「Nexus 3064」は1Uのボックス型L3スイッチで、10GbEポートを48ポートに加え、4ポートのQSFPポートを搭載する。QSFPポートは4つの40GbEポート、もしくは16の10GbEポートとして使える。つまり、10GbEを最大64ポート利用することになる。Nexus 3064の最大の特徴は高速な金融取引を前提とした1μsec(マイクロ秒)以下という超低遅延での転送が可能という点だ。「競合でも低遅延を謳う製品はあるが、フルL3機能を持っている製品は唯一だ」(ディーン氏)。

超低遅延のL3スイッチ「Cisco Nexus 3064」

 また、昨年投入されたNexus 5000シリーズには、よりポート密度を向上した「Nexus 5548UP」および「Nexus 5596UP」が追加された。末尾のUPはUnified Portの略で、Ethernet、FC、FCoEを1つのポートで利用できるという特徴がある。5548UPは、1Uラックマウント筐体に32ポートの固定10GbEポートと、拡張カードスロットが用意されている。5596UPは2Uラックマウント筐体に、48ポートの固定10GbEポート、3つの拡張スロットを搭載したモデルになる。ともに「VN-Link」を用いることで、仮想マシンに対するポリシーの設定を容易にするほか、物理ポートの設定を仮想マシンの移動に追従させることが可能だ。

1Uラックマントに1つの拡張スロットを持つ「Nexus 5548UP」

2Uラックマウントに3つの拡張スロットを持つ「Nexus 5596UP」

 また、Nexus 5548UPおよび5596UPは、Nexusのリモートラインカードとして機能するFEX(Fabric Extender)を24台つなぐことができる。Nexus 5000とFEXは1台の仮想スイッチとしてふるまうので、FEXでラック内のサーバーやスイッチを集約し、そのFEXをNexusにつなぎ込めば運用管理はすべてNexus 5000に対して行なえばよい。新たにサーバー向けのFEXアダプターが追加になったほか、FEXの仮想版であるVM-FEX、さらにNexus 7000対応のFEX「Cisco Nexus 2232PP 10GGE」の提供も開始した。

FEXを用いることで拡張性の高いスイッチ設計ができる

 LANとSANを統合するFCoE対応も強化した。これまでNexus 5000が先行していたFCoEだが、ダイレクタークラスのNexus 7000、MDS 9500でFCoEのマルチホップが実現した。もともとFCoEはスイッチとストレージ間のピアツーピア接続のみを前提としていたが、異なるセグメントへのマルチホップも行なえるようになり、設計の自由度が高まった。管理ツールもMDSとNexusで統合されたため、「ダイレクタークラスのスイッチでFCoEをサポートしたことで、真にSANとLANを統合することが可能になった」(ディーン氏)という。

Nexus 7000やMDS 9500でFCoEがサポートされ、さらにマルチホップも可能になった

クラウド間での仮想マシン移動を拡張する「LISP」

 ローカルのデータセンター内のみならず、地理的に離れたクラウド間のロードバランシングや連携(クラウドバースティング)を実現するため、新たにLISP(Location ID/Separation Protocol)がNX-OS上に実装された。これまでクラウド間で仮想マシンの移動に関してはOTV(Overlay Transport Virtualization)というVPNベースの技術が用いられていた。OTVはIPでMACフレームをカプセル化することで、異なるデータセンターのセグメント間でも、レイヤ2の仮想マシンの移動を可能するというものだ。

 しかし、OTVにも限界がある。「たとえばサービスプロバイダーに運営されているクラウドであれば、まったく別個のIPサブネットどうしで仮想マシンを動かす必要がある。しかし、これをルーティングベースでやろうとすると、経路も最適化されていないし、時間もかかる」(ディーン氏)。これを解決するため、ロケーションに依存せず、IPアドレスを移動させる技術としてLISPが開発された。

IDとロケーションを分離し、移動時にはIDのみを移動させる

 本来的にIPアドレスには、ホスト自体のIDとロケーションの情報が含まれており、ホストが移動すると、IDもロケーションも異なる新しいIPアドレスが付与される。しかしLISPでは、IDとロケーションを別々に管理し、移動してもIDだけは保持するというコンセプトに基づいている。「ロケーションを心配しない真のクラウドが実現する。どのリソースにアクセスしたいのかだけを考えればよい」(ディーン氏)。具体的にはロケーション情報とIPアドレスを登録したLISPのマッピングテーブルをスイッチが保持し、LISPヘッダでIPパケットをカプセル化する。LISPのマッピングテーブルとルーティングテーブルを同期させることで、仮想マシンの移動に追従させることができるわけだ。

 LISPは、Nexus 7000でサポートされる。あわせてMPLSに対応し、両者を用いることで、仮想マシンやワークロードの移動、広域のマルチテナントなど効率的に実現するという。

(次ページ、新Xeon搭載のUCSも続々登場へ)


 

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