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データベースベンダー5社とアライアンスを発足

HP、ロックリリース戦略でユーザーをオラクルから解放

2011年04月27日 10時00分更新

文● 渡邉利和

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4月26日、日本ヒューレット・パッカードはデータベース戦略を発表。あわせてデータベースベンダー5社と「データベース改革推進アライアンス」を発足させた。移行の手間の大きさからベンダーロックインが起こりやすい状況になっているデータベース分野で、柔軟な製品移行を実現するための施策に取り組む。

ベンダーロックインからの解放

 日本ヒューレット・パッカード(HP)は、データベースの“ロックリリース”(ベンダーロックインからの解放)を支援する新サービスとして、「HPデータベースライセンス ダイエットアセスメントサービス」「HP SQL標準化アセスメントサービス」「HPデータベースポートフォリオアセスメントサービス」「HPデータベースマイグレーションサービス」の4サービスの提供開始を発表した。

HPが提供する4つのサービス

 HPデータベースライセンス ダイエットアセスメントサービスは、データベースのライセンスコストの抑制を支援するサービスで、現行エディションのダウングレードや仮想化の利用などの手法で既存データベースライセンスの削減提案を行なう。HP SQL標準化アセスメントサービスは、ベンダーロックインの武器ともなっているデータベースベンダーの独自拡張部分を極力利用せず、標準規格であるANSI SQLに書き換えるための支援を行なう。当面は現行データベースの利用を継続しつつ、将来的には他のデータベースへの移行も視野に入れているユーザーを対象に、移行しやすい環境を整えるために役立つ。

 HPデータベースポートフォリオアセスメントサービスは、データベース利用の観点からユーザー企業のIT/業務の可視化を行ない、データベースの利用状況やビジネスとの対応付け、コスト削減提案などを行なっていくもの。HPデータベースマイグレーションサービスは、データベースの移行に際しての、移行先となる最適なデータベースの選択から乗り換え作業の工程策定やコストの見積もり、実際の移行作業の実施などを行なう。

 4サービスとも、同日提供開始。価格は、HPデータベースライセンス ダイエットアセスメントサービスとHP SQL標準化アセスメントサービスについてはHPサーバの購入時に無償で提供され、HPデータベースポートフォリオアセスメントサービスとHPデータベースマイグレーションサービスは個別見積となる。

 また、「データベースのロックリリース」というHPのコンセプトに賛同するデータベースベンダー5社と協調して「データベース改革推進アライアンス」も発足した。参加メンバーは、エンタープライズDB(Postgres Plus Advanced Server)、日立製作所(HiRDB)、日本マイクロソフト(Microsoft SQL Server)、SAPジャパン(SAP HANA)、サイベース(Sybase ASE)の5社とHP(HP Nonstop SQL)となる。

データベース改革推進アライアンス

HPとオラクルの対立構図

 今回HPがデータベースロックインの元凶として名指ししたのはオラクルだ。まず概要説明を行なった同社の執行役員 エンタープライズサーバー・ストレージ・ネットワーク事業統括の杉原 博茂氏は、市場調査による日本企業がテクノロジー面の優先事項を回答したトップテンリストを紹介し、5位にBI(Business Intelligence)が入っている点を指摘、多元的なデータ活用、内部統制の厳格化、経営スピードの変化といった要因から、データウェアハウスの導入を検討するユーザー企業が増えているとした。

日本ヒューレット・パッカード 執行役員 エンタープライズサーバー・ストレージ・ネットワーク事業統括 杉浦 博茂氏

 一方で、BI実現の基盤となるデータベースに関しては、コストの問題が大きいという。同氏が示した比較資料では、同一性能のシステムのコストの2005年と2011年での比較では、ハードウェアコストは8,302万円から373万円へと劇的に低下しているのに対してデータベースのライセンスコストは6,195万円から4,130万円とあまり低下しておらず、その結果2011年現在ではハードウェアコストの約11倍に達しているとした上で、「データベースを見直さなければ、システムコストの削減が困難」だと指摘した。

データベースを見直さなければ、システムコストの削減が困難

 この背景にあるのが、データベースの移行がユーザー企業にとって大きな痛みを伴う高リスクなプロジェクトであるという点だ。データベースを利用する各種業務アプリケーションにはデータベースにアクセスするためのSQL文が埋め込まれているが、特定のデータベースでしか実装されていないベンダーの独自拡張機能を利用することで他のデータベースへの移行が困難になる。データベースを移行しようと思ったら、データベースにアクセスする業務アプリケーションすべてを改修する必要が生じ、多大なコストと時間を要することになる。

データベース移行の阻害要因

 この点が、まさにベンダーロックインの強力な武器として作用していることになる。今回HPが発表した4つの新サービスは、この問題を正面から取り上げることでユーザー企業がオラクルのいいなりになるのではなく、必要とあれば他ベンダーのデータベースへの移行も可能だという状況を作ることで交渉力を高めるべき、という発想に基づくものだ。

 かつて、HPはオラクルとの密接なパートナーシップを強調し、オラクルのプラットフォームとしてのHPサーバーはワールドワイドでもトップレベルのシェアを誇ると豪語。国内でのオラクル関連のSI/サービスでも大きな実績を上げていることをアピールしていたが、「オラクルによるサン・マイクロシステムズの買収」「Oracle ExadataのプラットフォームをHPサーバーからサンのサーバーに切り替え」「HPを退任した前CEOマーク・ハード氏のオラクル入社に際してのトラブル」など、両者の関係の冷え込みを印象づけるような出来事が、この数年続いていた。今回の発表に関してHPでは「オラクルと戦うつもりはない」と再三強調してはいたが、一方で杉原氏からは「太陽政策」といった言葉が飛び出すなど、いきなり全面対立に至るような強硬な態度は採らないまでも、基本的には敵として扱う、といった意識が見え隠れしているようにも感じられた。

(次ページ、ユーザー企業が支払うライセンスコストが2倍に)


 

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