Sony Ericssonは「Mobile World Congress 2011」(MWC)で最新のスマートフォン「Xperia PLAY」など3機種を発表した(関連記事)。MWCで同社プロダクトプランニングオフィストップの大澤 斉氏に、Xperia PLAY、それに1月に発表した「Xperia arc」を中心に、スマートフォンでの戦略、タブレットなど新しい分野について話を聞いた。
まずはゲームという提案で北米市場を開拓する
「Xperia PLAY」
――「Xperia PLAY」では北米市場を狙ったスーパーボウルでの広告、Facebookのファンページでの事前予告など、マーケティングを工夫しました。どのような狙いがあったのでしょうか?
北米は強く意識しています。Xperia PLAYはただハードウェアを出せばいいという製品ではなく、コンテンツとエコシステムの両輪が回らなければヒットしないと思っています。そういった観点でマーケティング面でも工夫しました。
ゲーム機という製品提案で北米市場を開拓していきたいという強い思いが特に戦略としてあり、この市場を意識していることを前面に押し出した発表を行ないました。
――Xperia PLAYはまず北米でCDMA版をVerizon Wireless向けに提供することが決定しているようです。日本市場での展開計画は? キャリアと話を進めているのでしょうか?
まだはっきりしたことはお話できません。
日本はゲーム機市場が大きく、ゲームのエコシステム自体が日本を中心に回っていると言っても過言ではありません。ですから、社内には日本で展開したいというモチベーションが強くあります。現在キャリアと話をしているところです。
――スマートフォンでも「Angry Bird」などのゲームが人気となり、スマートフォン向けゲーム市場が注目されています。スマートフォンのゲームアプリブームを意識しての製品投入となりますか?
偶然です。Xperia PLAYは実は開発まで長い歴史があり、技術的なチャンスや機会が組み合わさり、ようやく出せた製品です。同時に、このレベルのスペックやコンフィグレーションが可能となり、今出すのが最適だろうという結論に至りました。
Androidというオープンなプラットフォームで
ゲームでも新しいエコシステムが生まれることに期待
――携帯電話から見たゲームという点では、Nokiaが「N-Gage」で失敗しています。2月13日の発表時にエコシステムを強調しましたがエコシステムでの戦略は?
iPhoneから始まった“カジュアルゲーム”という新しいエコシステムがあります。それまではプレイステーションなどのゲーム専用機をベンダーが準備して、ゲームベンダーがそれに合ったゲームを作る、という歴史がありましたが、iPhoneにより誰でも参加できるようになりました。新しいオープン型のエコシステムが広がっています。これが最大の変化です。
Xperia PLAYのゲームコンテンツは事前にインストールされているほか、Androidマーケットからもダウンロードできます。「PS Suite」(関連記事)も年内に開始予定で、ここからもダウンロードできます。
これにより新しい変化があるかもしれません。開発者自身が直接配信する(マーケットをつくる)動きが出てくるかもしれない、と見ています。たとえばGREEやモバゲータウンなどが新しいエコシステムを作ることは十分推測できます。
技術フォーマットがあり、その上でいろんな人がいろんな知恵を出せる。ここがAndroidの奥深さだと思います。ゲームに限定されません。ここに向けて、乗り遅れないようにハードウェアを提供することがSony Ericssonの役目だと思っています。
NGPとは異なるユーザー層を目指しており
棲み分けにはまったく問題がない
――ソニー(ソニー・コンピュータエンタテインメント)が「NGP」(Next Generation Portable)を発表しましたが、Xperia PLAYとNGPの棲み分けは課題となるのでしょうか?
われわれの中では違いは明確です。これは、ソニーが言うべきことですが……ソニーから出るのはPSPが進化したものです。PSP goではゲームをダウンロードして利用できるようになりました。その次として、どこでも通信できる(ゲームがダウンロードできる)ように進化した、それがNGPです。PSPの特性は、あくまでもゲーム専用機である点です。ゲームをするためのゲーム端末で、そこに通信などの機能が加わったという進化をたどっています。
一方、われわれのXperia PLAYはあくまでもスマートフォンです。スマートフォンに対して、どのような市場の広がりが可能か、ユーザーの好みにあった製品提案を提供できるか……そう考えたときに「スマートフォン+ゲーム」という軸が出てきました。通常はスマートフォンで、プラスαとしてゲームもある。スマートフォンだが、遊びが楽しめるという提案です。
ですから、シェアを奪い合うとは考えていません。ゲームの愛好者はゲーム機のスペックを求めている(のでNGPを選ぶ)と思います。
コンテンツでいえば、Xperia PLAYでは初代プレイステーションからのゲームや、Androidマーケットにあるゲームが中心にプレイされると予想しています。どちらかというとエントリー層と言え、ハイパフォーマンスを求めるゲームユーザーには物足りないかもしれません。

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