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西田 宗千佳のBeyond the Mobile 第64回

デザインも性能もグッドで低価格 Vostro V130を試す

2011年02月24日 12時00分更新

文● 西田 宗千佳

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プラットフォームは1世代前だが
ゲームでもしない限り不満は少ない

右端に1列くっついた、米国メーカーに多いタイプのキーボードレイアウト。底面剛性が高く、タイプ感は悪くない

 「安い」というと「作りが悪いのでは」と思われそうだが、そうではない。Vostroのキーボードは平均的な作りで、十分実用的なサイズとタイプ感といえる。個人的には、Vostroに採用されているような右端に[Page Up][Page Down]キーがあるタイプのレイアウトは好きではない。だが、タイプミスの元となりやすいEnterキーなどが大きめになっているため、この点はことさらあげつらうほどの欠点とはいえない。ボディー剛性が高く、キータイプ時に「ヨレ」を感じにくい点は、むしろ美点といえる。

 放熱性能も優秀だ。アルミボディーは熱が伝わりやすいものだが、Vostroではあまり熱を感じない。長時間使用していても、キー部やパームレスト、また底面も、さほど熱くならない。

各部の温度 放射温度計による測定、室温は21℃

 CPUに超低電圧版(ULV)を採用していることから、そもそも発熱が小さいという点もある。また、放熱口がコネクター同様に、本体の真後ろに向いているため、手が触れる範囲に熱い排気が触れないということも、不快感を感じにくくする理由となっていると考えられる。

 排気ファンが小さめであるためか、放熱が大きい時にはファン音が耳につくが、気になるのはその点くらい、というところだろうか。

Windowsエクスペリエンスインデックスの値

 Windowsエクスペリエンスインデックスの値は「3.3」。評価モデルはCPUにCore i5を搭載したモデルであったので、CPU的にはほとんど問題ではなく、ボトルネックはGPUである。

 この点でおわかりのように、Core i系とはいうもののプラットフォームは1世代前の「Calpella」プラットフォームで(CPUはArrandale)、「Sandy Bridge」こと第2世代Coreプロセッサーではない。そのため、GPUのパフォーマンスはどうしても低く感じてしまう。

 だが、3Dゲームでもしない限りは、この性能で大きな不満を感じるレベルではないし、そもそもこの製品で「バリバリゲームをしよう」というのもニーズが違う。発売が2010年末なので、プラットフォームが前世代なのはしょうがない、とあきらめるしかあるまい。

 逆に言えば、この価格性能比が実現できたのは、ライフサイクル末期のプラットフォームを採用しているがゆえ、と考えることもできるだろう。

バッテリーは取り外し不可
「4時間」までのパートタイムモバイラーに

Adamo

 Vostroのデザイン面の特徴として、もうひとつ指摘しておくべきことがある。それはバッテリーが取り外せない構造になっている、という点だ。デルの製品としては、デザイン特化であった「Adamo」に近い、といっていいかもしれない。

 「モバイルノートでバッテリー交換ができないのは不安」と感じる人もいるだろう。だが、筆者はその点をさほどマイナスとは考えていない。「このおかげでスマートなボディーが実現できているのだ」と考えるからだ。

 バッテリー駆動時間は、カタログ値では4時間30分程度。バッテリーベンチマークプログラム「BBench」を使った実測では、約3時間10~30分といった値となった。1日中外出先で使う「完全モバイルノート」として使うには不向きな値だが、ちょっとした出張が中心、というレベルであれば我慢できる値だ。増設バッテリーを用意してくれれば実用性は上がったと思うのだが、「価格」の前には再度口を閉ざすしかあるまい。

BBenchによるバッテリー駆動時間テスト
省電力設定 バランス設定
約3時間36分 約3時間10分

 「企業向け製品」とはいうものの、Vostroは個人でも購入できる製品だ。そのため、大企業向けに位置付けられる「Latitude」ブランドに比べると、vProテクノロジー対応が弱いなどの点で見劣りする。しかし、企業内個人や中小企業であれば、そこまで高度な管理機能を必要としない場合も多いだろうし、深刻に考える問題ではない。他方で搭載OSは64bit版が基本になり、バックアップソフトも付属といった部分は、企業向け製品らしい部分でもある。

付属のバックアップソフト。機能としてはシンプルだが、システム全体のバックアップも作成できる

 使ってみると「ああ、なんて普通に使える製品なんだ」と、ちょっと拍子抜けするくらい、Vostroはよくできたノートパソコンである。特別性能が高いわけでも、特別軽いわけでもない。SSDのような高価なパーツも使っていない。だから、特別な使い勝手を求める人には物足りないはずだ。

 だが、十分に魅力のあるデザインのモバイルノートが「6万円を大きく下回る」価格で買えると思えば、満足感はより高くなる。この形状でSandy Bridge系ならばどれほどのマシンになるのか……と感じる部分もあるが、グラフィックス性能にこだわるのでもない限り、そこまでセンシティブになる必要もあるまい。そのくらい「手軽に買って、壊れるまでこきつかう」のが似合うモバイルパソコン、という気がする。時々持ち運んで仕事に使う「パートタイムモバイラー」にお勧めの製品だ。

お勧めする人
・低価格なモバイルパソコンを探している人
・ちょっと人目を引くパソコンを安く買いたい人
Vostro V130(パフォーマンスモデル)の主な仕様
CPU Core i5-470UM(1.33GHz)
メモリー 4GB
グラフィックス CPU内蔵
ディスプレー 13.3型ワイド 1366×768ドット
ストレージ HDD 500GB
光学ドライブ 搭載せず
無線通信機能 IEEE 802.11b/g/n、Bluetooth 3.0
サイズ 幅330×奥行き230×高さ16.5~19.7mm
質量 約1.59kg
バッテリー駆動時間 約4.5時間
OS Windows 7 Professional 32bit版
価格(本稿執筆時点) 7万4980円

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筆者紹介─西田 宗千佳

1971年福井県生まれ。フリージャーナリスト。得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。主に取材記事と個人向け解説記事を担当。朝日新聞、読売新聞、アエラ、週刊東洋経済、月刊宝島、PCfan、YOMIURI PC、AVWatch、マイコミジャーナルなどに寄稿するほか、テレビ番組・雑誌などの監修も手がける。近著に、「美学vs.実利『チーム久夛良木』対任天堂の総力戦15年史」(講談社)、「クラウド・コンピューティング仕事術」「iPhone仕事術!」(朝日新聞出版)、「iPad vs.キンドル」(エンターブレイン)、「メイドインジャパンとiPad、どこが違う? 世界で勝てるデジタル家電」(朝日新聞出版)、「知らないとヤバイ! クラウドとプラットフォームでいま何が起きているのか?」(共著、徳間書店)。「電子書籍革命の真実 未来の本 本のミライ」(エンターブレイン)。

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