recommuniからナップスタージャパンへ
―― でもシステムとコンテンツをバランスよく見られる人って、日本では竹中さんくらいしかいないんですよ。それで竹中さんと音楽と言えば、まず「recommuni」なんですけど。サービスインは2004年の10月でした。
竹中 まず相当なコードを書きました。音楽がどんどん弱っていく中で、自分たちが具体的にどんなアクションを起こせるかを当事者として考えた結果です。当時は今みたいにミドルウェアなんてなんにもない状態でしたけど、SNSにジャンルとかアーティストを結びつけたら、当時のGREEやmixiよりもいいものができるんじゃないかと思ったんです。「所有感を伴った音楽の販売に関しての未来」について、何でもできる場だと思っていました。
―― 竹中さんが興味を持っているのはシステムデザインですか?
竹中 ソーシャルデザインです。自分が社会にどう関わるか、その仕組みを作ることです。「BCCKS」もそうですし「SPIDER」(1週間分8ch全TV番組を同時録画するレコーダー)もそうですし「未来検索ブラジル」もそうです。
―― それで急にタワーレコードのCTOになったというので、ビックリしたんですけど。
竹中 それは僕もビックリ。以前から「bounce」(タワーレコードのフリーペーパー)を電子化することとか、コマースのサイトをやっていたんですけど、当時の代表取締役だった伏谷博之さんから突然連絡があって。僕がオフィサーとしてそばにいると便利だと思ったんでしょうね。社内に僕のようにコードを書かずにはいられない人間がいれば、システム開発費が安く上がるだろうとかね。
―― 一石何鳥か分からないくらいですね。
竹中 それがrecommuniの立ち上げのタイミングでもあったんですけど、タワーレコードは当時上場を目指していて、上場企業の取締役は兼業できないんですね。
―― それでrecommuniは一旦身を退くと。
竹中 タワーが(販売先を)CDから転換する場合、recommuniのようなやりかたもありうると思ったんです。同時にナップスタージャパンの立ち上げもあったので、これを合わせれば最強の販売形態ができるかもしれない。音楽をどうするか考えた場合にベストだと思うからと、recommuniの皆には説明してタワーに行ったつもりだったんですけど、その後二年間でどんどん弱って潰れかけてたんです。
―― それ、書いてもいいんですか?
竹中 全然いいですよ。当時SNS機能は競合他社よりも優れた所がたくさんあったし、著作権文脈でも当時recommuniはすごく注目されていましたから、運営・宣伝のやり方次第ではチャンスはいっぱいあったと思うんですが、うまくいかなかった。僕自身についてもそうですけど、セルフプロデュースが下手なのは、僕が立ち上げたサービス全般に言えるんですよ。誰か助けてください(笑)。
―― あんなに散々立ち上げてるのに?
竹中 それぞれ大きなサービスにするための順番というものがあるわけですよ。まず先鋭的な数百人が集まってきて、そして何千人何万人と増えてゆく。recommuniの場合は何千人まではすぐに行ったんですが、その時点でのお客さんの期待を先読みして、答えを用意することができなかった。具体的には音源調達の遅さやその説明などが足りなかったことです。その後に来るはずの大規模化に至らなかった。
―― ナップスタージャパンはどうでしたか?
竹中 タワーレコードは意外と保守的で、販売に関するパワーを持っているわけですから、レーベル側に強い要求ができるにも関わらず、それをすべき時にしないんですよね。店で売るときに「独自の特典を付けてくださいよ」みたいなことは強く押すんですが、「配信を実験でやってみましょう」とか「ナップスターに曲を出してみましょう」とか、そういうことはなぜか強く言えなかった、遠慮して。
―― タワーも輸入盤チェーンとして日本に入ってきた時は、色々ありましたからね。
竹中 ナップスターはまだ早かったんでしょうね。それと名前が良くなかった。有名とはいってもノトリアス(悪名高い)なわけですよ。それに知らない人には意味分からないですからね。「ナップって何? 昼寝?」「スターって何の?」みたいなね。だから名前を変えようよとか、独自で作りましょうってことあるごとに言っていたんですけど。「ナップスター」ブランドに負うところも大きかったのでできなかった。
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