このページの本文へ

前へ 1 2 次へ

ゼロからはじめる最新サーバー選び -基礎編- 第6回

もっとも大きいのは、予算の縛り?

用途と場所から考えるサーバー選びの極意

2010年12月16日 09時00分更新

文● 伊藤玄蕃

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

設置場所による条件も忘れずに

 用途の次に重視すべきなのが、サーバーを設置する場所である。場所には、さらに空間と環境の2つの観点があり、それぞれサーバー選択に大きく影響する。

 まず空間面から考えよう。例外もあるが、サーバーは一般に、かなり大型のコンピュータである。ポピュラーなタワー型サーバーであれば、設置面積でデスクトップ型クライアントPCの2倍~4倍、体積では4倍~8倍設置スペースを必要とする。だいたい、オフィス用の事務机の四分の一から半分くらいは必要だ。拡張性やメンテナンス時の手を入れる余裕を考えると、机半分くらいは覚悟しておいたほうがよい。

 次に環境面から見ていこう。ここでは、サーバーから出る熱と音が問題になる。ポピュラーなタワー型サーバーの消費電力はピーク時に1000Wを超えることも珍しくなく、SOHOのように空間が狭く空調機の能力が高くない環境では、夏場の冷房の効きが悪くなることも考えられる。また、発熱量が多いサーバーは、その熱を外部に逃がすために強力なファンを装備しなければならず、ファンのモーター音や風切音も大きくなり、さらには埃を空気中に巻き上げることにもなり、執務環境の悪化をもたらす。つまり、社員の執務スペースに近くに設置するのであれば、発熱量や風量、ノイズレベルが低い製品を選ぶ必要がある。

 また、第3回で説明したように、いまのサーバーには、タワー型のほか、ラックマウント型、広義にはラックマウント型に含まれるブレード型やモジュラ型、マイクロサーバー型などのフォームファクターがある。空間に制約の少ない社内のサーバールームに設置する場合は、ラックマウント型でもタワー型でも自由にフォームファクターを選択できる。しかし、たとえば社外のデータセンターに利用料を払って設置する場合は、フォームファクターはラックマウント型指定で、かつ利用料金を抑えるために可能な限り小さいサイズに収める必要がある。また、SOHOであれば、設置面積が小さく、かつ、発熱量とノイズレベルの低い製品が好ましい。最近では、複雑でコスト高になりがちな水冷方式を採用したタワーサーバーが発売されているが、その狙いは、まさしくこの執務環境の悪化を防止するためである。

NECの「Express5800/GT110b-S(水冷)」。CPUなどからの熱を冷却液で筐体下部のラジエターに運び、低速回転ファンで排熱する。これにより、動作音をささやき声程度(30dB)に抑えたという

SOHOでは電源に注意

 「コンピュータ、ソフトなければただの箱」のもじりで、「コンピュータ、電源なければただの箱」という格言もある。特に消費電力の大きなサーバーでは、設置時に電源に関する問題が生じがちである。特にSOHOではよく起こるので、サーバー選定に際して、設置場所の電源の容量やコンセントの数・形状は、十分に確認しておこう。

 電源の契約容量の確認も重要だ。契約容量が低いと、ピーク時に容量不足でブレーカーが落ちるケースがある。当然、サーバーは止まってしまうので、データが飛んでしまう。最悪の場合は、HDDがクラッシュしたり、内部の発熱部品が冷却不足で故障する可能性がある。電源の容量には十分に注意しよう。同じ理由で、電子レンジや電気ポットなど、ピーク時の消費電力が大きな家電製品とは、配電系統を分離する(違うブレーカーの下流にする)ようにしたい。いずれにせよ、UPS(無停電電源装置)はサーバーには必須である。

 またサーバーには、電源コンセントを複数使用する機種や、通常の2極プラグではないプラグ(三極引掛式プラグなど)を使用する機種がある。また、ハイエンドクラスのサーバーには、200~240ボルト電源が必要な場合もある。カタログや構成ガイドなどの販売促進用資料に記載されているので、事前に確認しておこう。サーバーが納品されてから「電源プラグがコンセントにささらない!」「電圧が違う!」という事態は避けたいものだ。

最大の決め手は、やはり価格?

 理屈の世界では、サーバーは用途と設置場所によって決めるものである。しかし現実には、お金の話が最優先することが多々ある。よくある話は「予算がこれだけしかない」「今年払えるお金はこれだけ」というものだ。

 サーバーの価格は、CPUの性能と搭載数、メモリの容量、ディスクの容量ネットワークポートや外部接続インターフェイスの数により上下する。また、将来的な拡張性、管理機能の有無などでも関係してくる。購入時点で必要とされるスペックのリソースを搭載したサーバーでも、将来的な拡張性を犠牲にすれば価格は安くなるし、拡張性を十分に確保すると価格は高くなる。あるいは、遠隔監視/操作が必要なければ価格は安くなるし、それらが必要であれば価格は高くなる。この観点から、自社のサーバー機種の位置付けを公開しているサーバーベンダーもある(図1)。

図1 低価格製品(100シリーズ)と上位製品(300シリーズ)の位置づけの違い(日本HPの「HP ProLiant 導入する前のアドバイス」より)

前へ 1 2 次へ

カテゴリートップへ

この連載の記事