コロケーションと柔軟に組み合わせられる
都内型データセンター事業者ビットアイルの「Cloud ISLE」
2010年11月12日 09時00分更新
ビットアイルは、都心型データセンターを展開するデータセンター専門の事業者として知られる。このビットアイルがはじめたIaaSが「Cloud ISLE」。データセンター専門事業者自体が手掛けるクラウドサービスの魅力とは?
マッサージチェアが並ぶSIerに人気のデータセンター
ビットアイルは2000年に寺田倉庫の子会社として創業し、2001年に倉庫を改造したデータセンターをスタート。外資系のデータセンター事業者が次々と撤退した冬の時代を乗り越え、2006年にジャスダックに上場。寺田倉庫との資本関係も希薄になってきたこともあり、現在ではさくらインターネットやブロードバンドタワー、IDCフロンティアなどとともに独立系データセンター事業者として確固とした地位を築いている。
同社の4つのデータセンターは、すべて足場のよい都心に設置されている。この「都心型データセンター」というのが、ビットアイルを表す1つのキーワードになっている。都心に設置されているため、インターネットとの接続も広帯域で、電力も潤沢に供給されています。アクセスがよいため、まさに自社のサーバールームとして利用することができる。「ITベンチャーとのおつきあいも多いので、小さい規模のサービスから幅広くお使いいただいています」(福澤氏)。
また、セキュリティ面の配慮から作業員の入室をあまり歓迎しない他のデータセンターと異なり、1カ月に3000~4000人が出入りする同社のデータセンターは長時間・徹夜作業の多いエンジニアにフレンドリー。宿泊施設やマッサージチェアまで揃っており、SIerに人気が高いのも頷ける。データセンター内でデータセンターを運用するDC in DCという形態をとるKDDIや大塚商会のような企業も多い。
4つのメニューで構成されるCloud ISLE
このようにデータセンター事業を手掛ける同社は、ホスティングサービスなどは提供しておらず、いわゆるコロケーションがメイン。サーバーやネットワーク機器もあくまでレンタルという提供形態にとどまっていたが、昨年の夏から「Cloud ISLE」をスタートさせ、クラウドサービス事業に乗り出している。
Cloud ISLEは、仮想サーバーを提供する「サーバオンデマンドサービス」、アプリケーションのSaaS型提供を実現する「アプリケーションオンデマンドサービス」、仮想化の技術検証に利用できる「クラウドラボサービス」、そしてユーザー自身のクラウド環境の構築をサポートする「プライベートクラウドサービス」の4つのサービスから構成されている。
このうちIaaSにあたるサーバオンデマンドサービスは、VMware vSphere4をベースにしており、1ユーザーあたり1OS・1CPU単位で利用する共用型と、仮想化環境を専用サーバー単位で提供する専用型が用意されている。サーバーやネットワーク、ストレージなどのシステムは完全に冗長化されており、物理サーバーのフェイルオーバーを実現するVMware HAや無停止での仮想サーバーの移行を行なうvMotion、ストレージのミラーリングなどの機能により、高い可用性を実現する。専用型は4コア×2CPU、32GBメモリ、1TBのHDDまで利用可能。料金体系は月額課金で、1CPU割り当て仮想サーバーが2万5000円/月~、4コアCPU物理サーバーが6万円/月の、VMware搭載の物理サーバーが18万円/月となっている。
一方、サーバーや簡易な監視サービス以外の、インターネット接続やディスク増加、ロードバランサーのほか、Windowsライセンス、ゲストOSの追加&削除サービス、監視サービスなどはすべてオプションとして提供される。「インターネット接続をオプションとして分けている理由の1つは、コロケーションしているサービスと直接VLANを用いて接続する場合、インターネット接続が不要だからです」(福澤氏)という。
特徴としては、やはりコロケーションとの連携であろう。同社のデータセンターに設置された顧客サーバー等と接続することで、いわゆるクラウド+既存のシステムというハイブリッド型が容易に実現できる。また、前述したプライベートクラウドサービスでは、コンサルティングから機器のレンタル、設計・構築、そして運用まで完全にワンストップで行なえる。「仮想化環境から構築するシステムインテグレーション的なサービスです。プライベートクラウドサービスのユーザーの割合の方が、サーバーオンデマンドよりむしろ高いんです」(中島氏)ということで、データセンターならではの実績がモノをいっているようだ。
次世代基盤「サーバーオンデマンドNEXT」の正体
そしてビットアイルが11月9日に発表したばかりのサービスが「サーバオンデマンドNEXT」である。これはIBMやブロケード・コミュニケーションズの最新製品を採用した次世代クラウド基盤を用いたサービスで、ネットワークの高速化やFCoEの導入により、基本性能を大幅にアップした。この基盤をベースに既存のサーバオンデマンドのサービスが展開され、vCenterオプションやコントロールパネル、V2P/P2Vサービス、リモートアクセスなどのサービスも用意されるとのことだ。サービスは12月から随時スタートしている。
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