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NTT品質とコスト削減のバランスをどうするか?

全国の通信ビルが鍵? NTT Comデータセンター作戦会議

2010年11月08日 09時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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NTTコミュニケーションズのデータセンターといえば、堅牢でセキュアでネットワークが充実しているというイメージがある。しかし、コストとエコ優先のクラウド時代においては、これだけでは厳しいのも事実。本稿では同社のデータセンター担当者にこれまでのデータセンター事業を聞きつつ、今後の方向性についてディスカッションした内容をまとめてみた。

局舎貸しからスタートしたデータセンター事業

NTTコミュニケーションズ ITマネジメントサービス事業部アウトソーシングプラットフォーム部 主査 立野哲宏氏、同 DCプラットフォーム部門 担当部長 深村有史氏

 まず、NTTコミュニケーションズのデータセンター事業の経緯と現状について整理しておこう。もともと同社のデータセンター事業は電話局舎など旧電電公社時代の資産を利用しているという点で、他社とスタートラインが異なる。「今から20年前、電話局社に収容している交換機や伝送装置などの機器は巨大だったのですが、1990年代に起こった機器のダウンサイジングの流れで、機器が小型化し、機械室に空きができたんです」(深村氏)。空きスペースに顧客の設備を預かるいわゆる「局舎貸し」が、同社のデータセンタービジネスの萌芽にあたるわけだ。

 その後、1990年代後半にインターネットの普及を機に本格的なデータセンターとしての需要が高まり、ビジネスとして一本立ちできるようになった。「NTTが事業を行なうのと同じレベルの施設をお客様に貸しますよということです。もともと通信ビル(旧電話局舎)は日本中にあるというロケーションも優れていますし、地震にも、停電にも強い。カスタマイズ性も優れていますし、セキュリティも強固です」(深村氏)ということで、データセンターに適した資産を持っている。こうしたインフラや設備に通信事業者ならではのネットワークを組み合わせることで、NTTコミュニケーションズのデータセンターが生まれた。2010年9月30日時点で、同社が国内に展開するデータセンターの数は68拠点。このうち多くは国内各地の通信ビルにあるデータセンターというわけだ。

国内にあるNTTコミュニケーションズのデータセンター

 これとは別に、2000年以降のいわゆる米国データセンターラッシュにあわせて設計された、最新型データセンターもいくつか存在する。特に首都圏ではニーズにあわせて、2002年竣工の東京第2データセンター、以前紹介した2003年竣工の横浜第1データセンターなどが新設されている。また、東京、埼玉、神奈川など全7つのデータセンターを最大10Gbpsの帯域でメッシュ接続する「首都圏マルチデータセンター」という取り組みも行なっている。

 そして、最新技術を採用した東京第5データセンターを建設中。現在同社が保有するデータセンター総面積の約1/5にもあたる1万3321㎡という都内最大級の延床面積を誇る。2011年3月に竣工の予定となっている。

2011年3月に竣工の予定の東京第5データセンター

リーマンショックがデータセンターのコスト構造を変えた

 こうしたNTTコミュニケーションズのデータセンターは、堅牢なファシリティと大容量のネットワーク、そして高いセキュリティなど高いスペックを持つ。顧客のデータを預かり、企業のビジネスを支え、いまや社会基盤となるシステムが動くデータセンターが、こうした質実剛健な作りになるのはある意味当然のことだ。NTTコミュニケーションズに限らず、10年前に建築されたデータセンターは、とにかくこのスペックに邁進すべく、顧客のあらゆるニーズを満たす高水準な設計が行なわれていた。

 しかし、昨今クラウドコンピューティング時代を迎え、データセンターの要件や顧客ニーズが大きく変わりつつある。具体的にいえば、コスト削減や省電力への対応が重要になり、さらにグローバルでの競争が熾烈になっているという状況がある。堅牢なデータセンターを作れば、誰でも入ってくれるという時代は終わったのだ。

 このきっかけはやはりリーマンショックだ。「落ち込むとまでいかなくても、需要が冷え込み、競争が激化しているのは確かです。顧客が希望する価格もどんどん下がっているので、コスト削減の努力を怠る訳にはいきません」(深村氏)ということで、社内外の要望も大きい。特に日本の本格上陸を進める外資の金融系企業や業績がシビアな流通・製造系の会社では、1円刻みのコスト削減が求められているという。

 それにNTTコミュニケーションズの場合は、グローバルでの戦いもある。同社は2010年9月30日時点で日本国外に33箇所のデータセンターを持っており、ベライゾンやエクイニクスなどグローバル統一の料金体系を持つ通信事業者と対抗していく必要がある。「海外のデータセンターに比べて、インフラや電力事情が違うので、日本のデータセンターは過大スペックになることが多いですね。また、土地代と人件費も低いですし、国策としてデータセンターを優遇しているところもあります。それにグローバルのお客さまだとコスト的な要求も日本とレベルが違います」(深村氏)ということで、グローバルでの競争はさらに厳しい。

世界33箇所のNTTコミュニケーションズのグローバルデータセンター(同社サイトより)

 これに対して、NTTコミュニケーションズではグローバルでの製品調達や電力の一括購入、社内コスト削減などを進めている。「やはり我々としては低価格で高スペックなものを出していきたいので、一番大きな電気代を減らす必要があります。そのため、地方自治体の補助金制度などを活用して、電力コストを下げる取り組みもしています」(立野氏)という。

 だが、従来型の方策ではどうしても削減幅に限界があるし、高品質というNTTブランドを貶める戦略はとりにくい。深村氏は「2年前はロースペックなものは作らないという方針でした。いまはスペックは下げないけど、価格は下げるという方向性です。ただ、今後どういう方針で行くかは、正直悩んでいます」(深村氏)と、コストと品質のせめぎ合いがあることを認める。果たしてどのような方向性が考えられるだろうか? 

コスト削減に取り得る選択肢とは?

 さて、ここから先はあくまで筆者と深村氏、立野氏などとのディスカッション内容であり、同社の戦略や方向性を示した訳ではないことをお断りしておく。

通信ケーブルなどを敷設した洞道。こうした地下設備を持つのはNTTグループならではの強み

 たとえば、ファシリティの問題だ。建築中の東京第5データセンターも含め、同社はデータセンターの建設に大きなコストをかけている。もちろん、効率的な空調システムの導入などで徹底した省電力化は進めているが、建物自体のコストは大きい。そのため、コンテナ型データセンターなどの導入がありえないのか? これに関する答えは「可能性あり」だ。「通信機器を収容したコンテナを地方の田畑などに設置して、簡易電話局のようなことをさせていたような事例は電電公社時代から積み重ねています。ですから、空調設備をきちんと設計すれば、すぐに導入できます」(深村氏)という。

 もう1つは全国の通信ビルの活用だ。現在データセンターは都心型に人気が集まっているが、首都圏はどうしても土地や電力、人件費などでコストがかかってしまう。これに対して、NTTコミュニケーションズ自体が資産として所有している全国の通信ビルをより活用すれば、こうしたコストは多少なり安くなる。通信ビルのデータセンターを使うこと、ファシリティレベルがミドルグレードであることをユーザーに明示し、そのかわり割安で提供するという方策もありだろう。

 いずれにせよ今後データセンター事業だけでは生き残れないことは認識しており、全社・グループとしての総合力で勝負していくという。「アマゾンやグーグルでは、自分たちでシステム設計からデータセンターまで、すべてのサービス仕様を決められる強みがあります。一方で、われわれは通信キャリアである強みを活かすなど、ある分野において他社を圧倒的にリードする必要があります。」(深村氏)とのこと。熾烈な競争の中、各社とも自社のメリットをどのように活かしていくかに勝負がかかっている。

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