異なるチャネルでも干渉する?
それでは、11b/gのチャネルが異なる場合はどうなるか。図2の1と同じ環境で、11gを1chに固定し、11bを1chから1つずつ13chに向かってずらしながら、速度を測った。これが図2の2~13だ。これでは、7chまでずらした場合は低下が起こっている。だが、チャネルが近いほど速度低下が起こってはいるが、グラフからは明確な特徴として現われていない。そのため、スループットが低下するとは断言しにくい。
それでは、チャネルが重なっていても、通信に影響はないのか。続いて、通信速度のばらつきグラフ(図3)を見ていただきたい。今回の実験は、各チャネルごとに5回の測定を行ない、そこから伝送速度を求めている。図3は、この5回の測定結果の最大/最小値と平均値との差を示したものだ。
11b/gで同じチャネルを使用した場合、スループットのばらつきは50%以上ある(図3の1)。しかし図3の2~13と見ていくと、チャネルが離れるに従い、ばらつきが少なくなる傾向が読み取れるだろう。
これがどのような状態なのか、無線LANの検出・測定ツール「NetStumbler」を使って信号の状態を検証してみた(画面1・2)。チャネルを離して安定した通信が行なわれている11gのアクセスポイントの電波状態が画面1、同じチャネルの電波状態が画面2だ。ノイズレベルは-100dBmを両方とも維持しているが、緑色のバーで塗りつぶされている信号品質のギザギザは画面2の方が激しいことに注目してほしい。これにより、同チャネルに11bと11gの電波が飛び交うことによって、平均して28%程度の振幅だった35%近くまで広がり、信号強度の最大平均も-15dBmから-30dBmにまで低下していることが分かる。
このことから読み取れるのは、チャネルが近いとCSMA/CAがうまく働かないことによる干渉が起こっていることだ。そのため、ホストが多くなったり、アクセスポイントが増加するなどの悪条件が追加されれば、11gの信号品質は大幅に悪化することが予想できる。
総合すると、11bと11gを近隣で併用する場合、利用する周波数が重ならないようチャネルを離して設定するのが、やはり正しい使い方だ。また、最近の11gアクセスポイントには、「11b通信優先モード」を持っているものが多い。これは、11gの通信中には11bのノードに対して通信中であることを示す信号を送信し、11gの通信に干渉させない仕組みのことだ。両者を混在させるには、アクセスポイントのみ11gに切り替えていき、優先度の高いノードについては11gだけのネットワークに参加させるといった工夫を行なうのがよいだろう。
本記事は、ネットワークマガジン2004年12月号の特集を再編集したものです。内容は原則として掲載当時のものであり、現在とは異なる場合もあります。 |
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