このページの本文へ

前へ 1 2 次へ

無線LANのすべて第1回

見えない電波の通信もしっかり見える?

無線LAN規格「IEEE802.11」について知ろう

2009年09月03日 06時00分更新

文● 鈴本薫平

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

無線LANの規格で、最近ニュースなどでよく目にするのは「IEEE802.11n」だが、量販店の店頭では「IEEE802.11b」や「IEEE802.11g」など、末尾のアルファベットが違うだけの規格がまだまだ主流である。では、これらに共通する「IEEE802.11」とは何なのだろうか?

IEEEとは?

 無線LANに関する規格には、「IEEE802.11」で始まるものが多い。たとえば、最近ではドラフト2.0対応の製品が店頭に並んでいるIEEE802.11nや、PlayStation Portableに搭載されたIEEE802.11b、またPLAYSTATION 3にはIEEE802.11b/gなど、およそ「無線LAN対応」と書かれた製品に共通するのが、IEEE802.11というキーワードだ。

 では、この単語はどのような意味を持つのだろうか。

 まず先頭のアルファベット「IEEE」は、「Institute of Electrical and Electronic Engineers」の略で、アイトリプルイーと読むのが一般的である。米国電気電子学会と訳されるこの組織は、電気や電子、エレクトロニクスの分野における最大かつもっとも権威のある学会である。

 このIEEEでは、さまざまな規格の標準化活動が行なわれている。たとえば、Ethernet関連の標準化は「IEEE802.3」というワーキンググループ(WG)が担当し、無線LAN関連はIEEE802.11というWGが担当する※1。また、それぞれのWGには複数のタスクグループ(TG)が設置され、各TGにはアルファベットや数字などの識別子が与えられる。

※1ほかにも、BluetoothやUWB(Ultra Wide Band)関連の無線PAN(Personal Area Network)を扱うIEEE802.15WGや、WiMAX(Worldwide interoperability for Microwave Access)に代表される無線MAN(Metropolitan Area Network)を扱うIEEE802.16WGなどがある。

標準化されるまでの道のり

 ところで、IEEE802.11nの話題が出るようになって、すでに2年以上経過しているが、現時点で入手可能な製品には「ドラフト2.0対応」と書かれている。ドラフトは「暫定版」を意味しているので、正式版ではない。IEEE802.11nの標準化作業自体は2003年に始まっているのに、なぜこれほどまでに規格の策定に時間がかかっているのだろうか。IEEEにおける標準化プロセスを紹介しながら、この疑問を解消しておこう。

写真1 コルブリス・ネットワークスの企業向け無線LANアクセスポイント「MAP-625」。IEEE802.11n ドラフト2.0だけでなく、既存のIEEE802.11a/b/gのクライアントも収容できる。フラップを開けた状態で十分な利得が得られるが、アンテナの増設も可能

 まず、標準化したい規格をIEEEに持ち込む際に、スタディグループ(SG)を立ち上げる。このSGではTG設立の準備※2を行ない、WGを通じてIEEE-SA(Standard Association)にTGの設立を申請する。IEEE-SAから承認が下りれば、TGとしての活動が可能になり、この時点でアルファベットなどの識別子が与えられる。11nの場合はTGnである。

※2PAR(Project Authorization Request、プロジェクト承認要求)を作成する。このPARには、広い市場性や既存技術との互換性といった5つの判断基準(Five Criteria)を盛り込まなければならない。

 TGでは、TGに参加するスタッフ(メーカーの代表者など)が規格案を作成するが、自社が取得している特許や技術が採用されれば、当然製品化の際に有利なので、「我も我も」という展開になる。これはどのTGでもある光景である。11nの場合はTGの立ち上げが2003年で、2004年の9月の時点で32種類の提案に収束。同年の11月には「MITMOT」、「TGn Sync」、「WWiSE」、「Qualcomm」という4つの規格案に絞られた。通常であれば、この中から1つの案を中心にして他の提案を盛り込みつつ、規格の完成度を高めるという作業に移る。ただ、残念ながら11nの場合はスムーズにいかなかった。

 まず、2005年1月のミーティング※3の前にQualcomm案がほかの提案に統合された。そして1月の投票で、残る3つの規格のうちMITMOT案が脱落。この結果、TGn SyncとWWiSEの案が残った。その後、3月に行なわれた投票ではTGn Sync案が過半数の支持を集めた。そして、5月の再投票でTGn Sync案が75%以上の支持を得られればドラフト1.0が誕生するはずだったが、残念ながら届かず、差し戻しの状態になった。

※3:TGnのミーティングは、1カ月おきに開催される。

 ここで、本来であれば次回の7月のミーティングでは決選投票前の状態、すなわち1月の三つ巴の状態に戻って投票を行なうはずだった。しかし、1月に脱落した段階でMITMOT陣営を構成していた三菱電機はTGn Syncへ、一方のモトローラはWWiSEに参画した。そのため、三つ巴にならなくなってしまったのだ。こうなると、「TGn Syncの提案とWWiSEの提案を上手にすり合わせて、75%以上の支持を目指す」のがセオリーと思われるが、残念ながら両者は譲らずに平行線をたどってしまい、いっそう先行きが不透明になった。

(次ページ、「そしてドラフト誕生へ」に続く)


 

前へ 1 2 次へ

この連載の記事
ピックアップ