9月28日、HPは従来のハイエンド・ストレージ「XPファミリ」の後継となる新世代製品「HP StorageWorks P9500」を“次世代ハイエンド・クラウドストレージ”として発表した。4月に発表済みの「第2世代HP Integrityサーバー」と組み合わせてミッションクリティカルクラウド基盤を構成する。
アプリケーション性能の最大化
日本HPは、ハイエンドストレージ「HP StorageWorks XPファミリ」のラインナップを一新して「HP StorageWorks P9000ファミリ」とし、第1弾製品として「HP StorageWorks P9500ディスクアレイ」を発表、同日販売開始した。従来の「XP24000」と「XP20000」の2モデルをP9500で置き換える形となる。
ハードウェアは、従来のXPファミリと同様、長く続いている日立とのパートナーシップに基づく共同開発という形になっており、同日に日立が発表しているHitachi Virtual Storage Platformと同等で、主な新機能となる自動階層化機能(HPでの名称はHP StorageWorks P9000 Smart Tiers)についても同様となる。
一方、HP独自の機能としてサーバー部門とストレージ部門が共同で開発したという「HP StorageWorks P9000 Application Performance Extender」(APEX)と呼ばれるQoS機能が提供される。サーバーの仮想化が普及した現在では、アプリケーションに割り当てられる仮想サーバに対するCPUやメモリなどのリソース量はハイパーバイザー側で緻密に制御され、アプリケーションの内容に応じたQoS設定が適用されている。一方、ストレージ側は独立に制御されているため、サーバ側で高い優先度に設定されたアプリケーションのトランザクションのための帯域がSAN上で確保できなかったり、ストレージ側でのI/O処理が適切な優先度で処理されなかったりといった不整合が起こっていた。APEXはこれを解消し、サーバからストレージまでのエンド・ツー・エンドでQoSを実現する。
APEXは、中央で制御を担うAPEXサーバと、アプリケーションを実行する各サーバー上で稼働するエージェントの組み合わせとして実装され、16段階の優先度(サービスレベル)の設定が可能。サーバー上で発行されるストレージI/Oに対してAPEXエージェントが優先度タグを付与し、SANスイッチおよびP9500ストレージがこの優先度に応じて処理することで一貫したQoSを実現できるという。APEXが割り当てる優先度は、実際にはHP-UX上で設定される“プロセスグループ”に対して割り当てられることになるため、任意の粒度できめ細かな設定が可能だ。
Smart Tiersによるデータ配置の自動最適化機能と合わせ、運用管理作業のうちの特に煩雑な部分を自動化でき、大規模なミッションクリティカル・クラウドを実現するための中核ストレージとして充分な機能を備えたといえるだろう。
全体最適の実現
日本ヒューレット・パッカードの執行役員 エンタープライズサーバー・ストレージ・ネットワーク事業統括の杉原 博茂氏は、ミッションクリティカルなストレージ環境での従来の課題として、「SLAとコストのバランスをどうするか」という点を挙げた。ミッションクリティカルといえば、とにかくSLA最優先と考えたくなるが、コストを度外視できるわけではなく、結局は適切なバランスポイントを見つけ出す必要がある。同氏は、これまでは部門単位やシステム単位といった形での部分最適はかなりのレベルで実現できていたものの、全体最適にはまだ至っていなかったという認識を示し、P9000ファミリの自動階層化機能やQoS機能によって、コストとSLAのバランスを取るのが容易になると説明した。
HP StorageWorks P9500ディスクアレイの最小構成価格は、3280万2000円。
