米カリフォルニア州サンフランシスコ市内で9月1日(現地時間)、米Appleによる音楽イベントが開催された。同社による音楽イベントは過去何年かにわたって定番になっているもので(筆者が初取材したのが2005年)、毎年ほぼこの9月の新学期シーズン(米国では9月が新学期スタートにあたる)に音楽をテーマにした発表が行なわれている。iTunesなど音楽関連のサービス、iPod新製品などが登場するのがこの時期であり、今年のイベントもまた開催直前に新製品に関するいくつかの“うわさ”がネット上に飛び交っていたことが記憶に新しい。
だが今回、イベント実施に際してひとつだけ従来と大きく違った点がある。それはApple公式でイベントのストリーミング配信を行なったことで、“ある条件”さえ満たせば誰もがイベントの雰囲気を世界中からリアルタイムで体験できたのだ。この“ある条件”とは「MacまたはiPhone/iPod touch/iPadを持っていること」というもので、これら端末のSafariブラウザーを使ってAppleサイトのトップページへとアクセスすることでストリーミング配信が受けられる。この機種限定という方針がいろいろな意味で大きな話題となった。というのも、本来であればこうしたイベントは新製品発表の場ということでより多くのユーザーにアピールすべきなのだが、今回対象としているのはMacやiPhone、iPod touch、iPadをすでに持っている既存ユーザーであり、Windowsや他社製品を使う新規開拓層ではない。一種の既存ファン向けのプレミア上映会みたいなものだ。
いろいろな考えがあるとはいえ、実際にストリーミング中継を見た筆者の感想は「非常にクォリティの高い放送」といったものだった。まず本稿の写真にあるように画質が非常に高いこと。またビットレートが高く、動きも全体にスムーズだった。最近、プレス限定だった発表会にウェブキャスト活用での一般向けアピールをする企業は増えてきているが、その多くはスライドの文字も判別できないような画質で、動きもコマ送りかと思うものが多々見受けられる。その点、今回の発表は非常に満足のいくもので、ステージ後半にところどころ中継が乱れる現象こそ見られたものの、リアルタイムで現地にいるのと同じ風景を体感できるのは素晴らしいと思った。今後、このAppleの中継放送に刺激を受けて、他社も同程度の配信品質へと向上してくれることを祈っている。
さて、今回は「本記事を読むだけで発表会の様子が全部わかる」をテーマに、ここでの発表内容を紹介していこう。またApple製品ユーザーであれば、ストリーミング中継のリプレイをいつでもサイト上で閲覧することも可能だ。そういった環境にない、あるいは環境があっても時間がない、手っ取り早くイベントのエッセンスを知りたいという方は、ぜひ本レポートをご覧いただきたい。
iOS 4.1/iOS 4.2をプレビュー、iPad初のiOS 4アップデート
Appleイベントはいつも、同社の現状報告からスタートする。壇上に登場した米Apple CEOのSteve Jobs氏は、会場に賓客として招いた長年パートナー、Steve Wozniak氏が会場の席にいることを紹介しつつ、拡大しつつあるApple Storeの現状について語った。まず直近の話題としては、フランスのパリ、英国のロンドンの直営店がスタートしたほか、中国で2号店となる上海店舗の様子を紹介した。現在、日米加豪に加え欧州5ヵ国に中国で、世界10ヵ国、合計で300のApple Storeが存在するという。しかも初のMac購入者のうち、約半数以上が同ストアを経由して購入したというから、アピール効果の高さのほどがうかがえる。
そして今回最初のテーマとなったのはiOS(旧iPhone OS)だ。iOSは現状、iPhone、iPod touch、iPadと3種類のデバイスが存在しており、Appleのデバイス戦略の一翼を担う存在にまで成長した。こうして出荷されたiOS搭載デバイス数は1億2000万台を突破し、現在日々のiOSデバイスの新規アクティベーション数は23万台平均だという。App Store経由のダウンロード数は累計65億本となり、秒間200ダウンロード、これまでに蓄積されたアプリ数は25万、そのうち2万5000本がiPad用だという。この資産をどう活用していくかが今後の同社にとって重要となる。その施策のひとつが定期アップデートによる機能強化だ。