「ServersMan HD」のココに注目
フリービットの「ServersMan HD」は、アプリ内部にウェブサーバー(lighttpd)を搭載したサーバーソフトだ。サーバーとはいっても、システムのバックグラウンドに常駐するデーモンのような形ではなく、「ServersMan HD」が動作するデバイス(iPad)を離れた位置からアクセスすることが目的だ。
具体的には、ファイルサーバーとしての活用が挙げられる。WebDAV対応のウェブサーバーとして機能するため、ウェブブラウザーはもちろん、Mac OS XのFinderなどWebDAVクライアント機能を備えたファイルブラウザーからも読み書きできる。iPadが地球上のどこにあろうと、Wi-Fiさえ通じていれば(3Gモデルは通信圏内であれば)、ファイルを受け渡しできるのだ。
ServersManシリーズにはiPhone版もあり、iPadでも動作するが、iPad専用として開発された「ServersMan HD」を利用した方がいい。iPadのXGA液晶に最適化されているため、iPhoneアプリの2倍表示ではなく、画面をフルに使い写真を精細に表示できる。テキストはもちろん、Microsoft Office(Excel/Word/PowerPoint)やiWork(Numbers/Pages/Keynote)などのオフィス文書をプレビューする機能も装備されているため、業務用の書類を周囲に見せる場合、あるいは出先でのプレゼンテーションなど、9.7インチというiPadの画面の大きさを生かすことができる。
PDFビューワーとしての機能にも注目したい。ビューワーはフリービットの独自開発であり、iOS標準装備のAPIを使用している他のPDFビューワーアプリと比べると、多少挙動が異なる。たとえば、iBooksや「GoodReader for iPad」では、PDF上のフォントを無段階に拡大できるが(最大時で約8cm)、「ServersMan HD」ではダブルタップで1サイズ上に切り替えられるにすぎない。その代わりページ遷移は高速で、ほぼ一瞬で次のページを表示できる。
個人的に重宝しているのが、ビューワーモード時画面右上に表示されている[次の方法で開く...]ボタンだ。これをタップすると、表示している文書に対応した(インストール済みの)ビューワーアプリが表示され、アプリ間でPDFを転送できる。サーバー機能を備える「ServersMan HD」は、ワイヤレス回線を通じインターネットから直接ファイルを受信できるため、iTunesを介すかローカルのWi-Fi経由でなければファイルを受け取れないアプリへの「受け皿」となることができるのだ。
惜しまれるのは、動作が若干不安定なこと。KeynoteやPDFを表示しているとき、ふとした拍子でアプリが異常終了する場面に何度か遭遇した。PDFの互換性にも問題があるようで、dvipdfmx(LaTeXで生成したDVIファイルをPDFに変換するコマンド)で作成したカラーのPDF文書は、iBooksやGoodReaderなど標準APIを使用するアプリでは表示できたが、「ServersMan HD」は画面が白くなるだけで何も表示されなかった。この辺りについては、今後バージョンアップ時の修正を期待したいところだ。
