こっそり始まったTransmeta
トーバルズ氏の雇用で知名度が上がる
x86 CPUのベンダーとしては、インテルやAMD、VIA(Cyrix/IDT)というのが3大ベンダーであるが、そのほかに低消費電力CPUの分野で忘れてはならない企業として、Transmetaがある。
Transmetaは1995年、「こっそりと」設立された。最初の設立者の中には、その後もCEOやCTOをずっと務めたデビット・ディッツェル(David Ditzel)氏がいる。こっそりと設立されただけに、当初は話題にも上らなかったが、そののち開発の進展にともない、腕の立つエンジニアを多く参集することにより、次第に人々の耳目を集めていく。
特に1997年、Linuxの開発者であったリーナス・トーバルズ(Linus B.Torvalds)氏を雇用したことで大きく有名になる。1999年11月には、同社のウェブサイトのHTMLコメントの形で、2000年1月に製品を発表することを公開。そして予定どおりの2000年1月19日に、最初の製品である「Crusoe TM5400」と「Crusoe TM3200」が発表された(関連記事)。ちなみにTM3200は当初、TM3120として発表されている。
基本的なアーキテクチャーは、VLIWベースのプロセッサーである。Crusoe TM5400/TM3200はともに、128bitのVLIWで、同時4命令実行可能(つまり命令長は32bit)であった。このVLIWそのものは独自命令セットとなっており、x86とは互換性がない。そこでCrusoeではx86命令をデコードし、動的に独自のVLIW命令に変換。それを実行するという形で処理していた。
この動的な変換を同社では「コードモーフィング」と呼んでおり、コードモーフィングの処理を「CMS」(Code Morphing Software)で規定している。言ってみれば、CPU自身が独自にBIOS(というかファームウェア)を持つような形である。技術的には、CMSを変えればx86以外にも、ItaniumだろうがARMだろうが対応可能になるはずだ。しかし、最終的にx86以外に対応したCMSはついに登場しなかった。また、CMSそのものはCPUパッケージ内に封入されており、あとからアップデートすることも不可能だった。
ちなみに当初はTM5400とTM3200の2つの製品ラインが存在したが、どちらも基本的なアーキテクチャーは同一で、キャッシュサイズ(TM3200は1次データキャッシュが32KBに減り、2次キャッシュを持たない)やメモリー(SDRAMのみサポート)、動作周波数などが異なるだけである。
Transmetaは当初、TM5400をノートPC向け、TM3200をインターネット端末などの組み込み用途向け、といった形でカテゴリー分けをしていた。ただ、使ったことのある方はご存知だろうが、TM5400でも性能的には決して十分とは言えなかった。その結果、TM3200を使ったシステムはそれほど多くなかった。特に、後述するTM5600が登場し、ノートPCがこちらを採用するケースが多くなると、TM5400がインターネット端末向けとして広く利用されるようになる。それもあって、TransmetaはTM3200の製品ラインを早々と打ち切り、TM5600/5400の製品ラインに集中するようになった。
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