このページの本文へ

ゼロから分かる東京都青少年健全育成条例改正問題 第1回

非実在青少年は、なぜ問題なのか?

2010年06月10日 09時00分更新

文● 高橋暁子

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

6月の再審議を控え、関連報道もちょくちょく見かけるようになった(画像はTOKYO MXのYouTubeチャンネルから)

1.基礎知識

Q:東京都青少年健全育成条例って何?

A:東京都が18歳未満の青少年保護育成とその環境整備を目的として公布した条例。昭和39年に制定された。正式名称は「東京都青少年の健全な育成に関する条例」。

 青少年の環境の整備を助長するとともに、青少年の福祉を阻害する恐れのある行為を防止し、青少年の健全な育成を図ることを目的としている。優良図書類等の推奨および表彰、有害図書類や有害玩具類の規制、青少年とのみだらな性交や性交類似行為の禁止、青少年の保護に関する都や保護者の責務などが規定されている。

 2005年に一度改正され、インターネット対策として、事業者・保護者らにフィルタリングソフトの利用を求める規定などが盛り込まれている。


Q:条例のどの部分が改正されるの?

A:条例案で改正されているポイントは複数ある。大きいのは、「非実在青少年」規制と児童ポルノ問題だろう。しかし、あまり注目はされていないが、それ以外の部分にも評価の分かれる部分が非常に多く、ともに検討していく必要がある。具体的には以下の箇所だ。

○携帯電話端末等の推奨(第五条の二)…未成年が利用する携帯電話端末等の推奨制度

○図書類等の販売等及び興業の自主規制(第七条)、不健全な図書類等の指定(第八条二)、表示図書類の販売等の制限(第九条)…青少年に対する悪書の販売等の規制

 ※そのうち「非実在青少年」の規制は第七条二、第九条の二

○児童ポルノの根絶及び青少年性的視覚描写物のまん延抑止に向けた気運の醸成及び環境の整備(第三章の三)…児童ポルノ抑制と単純所持の規制

 ※そのうち「児童ポルノ単純所持の規制」は第十八条の六の四

○インターネット利用環境の整備(第三章の四)…情報教育の内容・方法の基準規定、フィルタリング解除手続きの厳格化、フィルタリングの水準に関する規定の創設、公的機関に対する問題情報の提供要請等

改正案の原文などは東京都青少年・治安対策本部の「東京都青少年の健全な育成に関する条例改正案について」(http://www.seisyounen-chian.metro.tokyo.jp/seisyounen/08_jyoureikaisei.html)からダウンロードできる


Q:どのポイントが問題とされているの?

A:改正されるポイントごとに、問題点を見ていこう。

○携帯電話端末等の推奨(第五条の二)…未成年が利用する携帯電話端末等の推奨制度

→平成20年6月18日に、正式名称「青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律」、通称「青少年ネット規制法」または「青少年インターネット環境整備法」が、青少年が安全に安心してインターネットを利用できることを目的として制定されている。そこでは、保護者の自由な意志による選択が可能になっているが、都の条例改正案は保護者の意志を制限している。

行政が特定の携帯電話を推奨することは、表現や経済の自由、携帯電話事業者の営業の自由に対する介入・制約に当たる。


○インターネット利用環境の整備(第三章の四)…情報教育の内容・方法の基準規定、フィルタリング解除手続きの厳格化、フィルタリングの水準に関する規定の創設、公的機関に対する問題情報の提供要請等

→青少年インターネット環境整備法の第3条では、「民間における自主的かつ主体的な取組が大きな役割を担い、国及び地方公共団体はこれを尊重する」と規定されている。フィルタリングに関しても、附帯決議に、「事業者等が行う有害情報の判断、フィルタリングの基準設定等に干渉することがないようにすること」と規定してあり、条例改正案は法の趣旨に反している。

→青少年インターネット環境整備法では、保護者の自由な意志による選択が可能になっているが、一方都の条例改正案は保護者の意志を制限している。

→フィルタリングの解除制限は、青少年の表現の自由、知る権利、自己決定権、青少年の成長発達権、保護者の監督権に反する。

→行政が自主規制機関のフィルタリングの基準に介入することは、青少年の表現の自由、知る権利、自己決定権、成長発達権を侵害し、憲法上保障されている表現や営業の自由を制約する。

→答申から、EMA(モバイルコンテンツ審査・運用監視機構)などの民間団体の活動を否定するととらえられかねない内容であり、民間団体の活動を後退させかねない。


 次の2点に関しては、次ページで詳しく解説する。

○図書類等の販売等及び興業の自主規制(第七条)、不健全な図書類等の指定(第八条二)、表示図書類の販売等の制限(第九条)…青少年に対する悪書の販売等の規制

 ※そのうち「非実在青少年」の規制は第七条二、第九条の二

第七条二

 年齢又は服装、所持品、学年、背景その他の人の年齢を想起させる事項の表示又は音声による描写から十八歳未満として表現されていると認識されるもの(以下「非実在青少年」という。)を相手方とする又は非実在青少年による性交又は性交類似行為に係る非実在青少年の姿態を視覚により認識することができる方法でみだりに性的対象として肯定的に描写することにより、青少年の性に関する健全な判断能力の形成を阻害し、青少年の健全な成長を阻害するおそれがあるもの。

第九条の二

 第八条第一項第二号の東京都規則で定める基準 非実在青少年を相手方とする又は非実在青少年による性交又は性交類似行為に係る非実在青少年の姿態を視覚により認識することができる方法でみだりに性的対象として肯定的に描写することにより、青少年の性に関する健全な判断能力の形成を阻害し、青少年の健全な成長を阻害するおそれがあるもの。


○児童ポルノの根絶及び青少年性的視覚描写物のまん延抑止に向けた気運の醸成及び環境の整備(第三章の三)…児童ポルノ抑制と単純所持の規制

※そのうち「児童ポルノ単純所持の規制」は第十八条の六の四

第十八条の六の四(児童ポルノの根絶及び青少年性的視覚描写物のまん延抑止に向けた都民等の責務)

 何人も、児童ポルノをみだりに所持しない責務を有する。

カテゴリートップへ

この連載の記事

アスキー・ビジネスセレクション

ASCII.jp ビジネスヘッドライン

ピックアップ