SiSチップセットの歴史 その2
ハイエンド路線には乗れず バリュー向けで終わったSiS
2010年05月31日 12時00分更新
2007年にはインテル向けチップセットビジネスは終了
新しい製品としては2006年3月に、SiS649に「Mirage 1」グラフィックスコアを統合した「SiS662」がリリースされる。この路線はしばらく継承され、2006年6月には搭載するGPUを「Mirage 3」コアに変更した「SiS671」が、さらに2007年2月には、GPUの動作周波数を若干引き上げた「Mirage 3+」コアに変更した「SiS672」がリリースされる。
これらはグラフィックス統合でわかるように、完全にバリュー向け製品だ。バリュー向けならFSBも533MHz/800MHzのみのサポートでよい、と割り切った製品である。ただインテルのCore 2プロセッサーの主流が1333MHz FSBに移行した関係で、1066MHz FSBの製品もバリュー向け扱いとなる。
これに対応するため、SiS671を1066MHz FSBに対応させた「SiS671FX」が2006年11月にリリースされる。さらに2007年2月には、GPUをMirage 3+に変更した「SiS672FX」がリリースされるが、ここでインテル向けチップセットは完全に終了となった。
一応、現時点でもまだSiSはチップセットの提供を続けているし、SiS671のモバイル向けである「SiS M671」がAtom向けに採用されている。だがNVIDIAなどと同様に、SiSはCore iシリーズで必要なQPI/DMIのバスライセンスを取得していない。そのため、対応できるのはあくまでCore 2やAtomの第1世代まで。いわばレガシーのCPUのみであり、今後の展開は難しいところだ。
またVIAとは異なり、SiSは自社でCPUを持ち合わせてはいないので、この先の展開はまったくないことになる。なお、SiS550のCPUコアについては、台湾DMP Electronics社に完全に売却してしまったようで、すでに自社でのIP提供も行なっていない模様だ。SiSは2009年あたりからSoCデザインサービスを行なっているが、この中で提供されるIPに、CPUコアは含まれていない。
最後に余談になるが、同社のバス技術である「MuTIOL」についても触れておこう。ロードマップ図では、SiS645以降のすべてで、チップセット間接続に「MuTIOL 1G」というリンクを利用している。これは16bit/533MHzの双方向リンクで、片方向あたり1GB/秒の帯域を持つものだが、当初はともかく昨今ではちょっと性能不足が目立つ。
もちろんSiSもこのことはよくわかっていた。2005年頃のロードマップを見ると、「SiS966」サウスブリッジまではMuTIOL 1Gを使うが、2005年末にリリースされる「SiS967」なるサウスブリッジからは、MuTIOL 2Gをサポートすることになっていた。これは16bit/1GHzの双方向リンクとなる予定だったが、最終的に消えてしまったようだ。
真面目にチップセットビジネスを続けるつもりならば、システム全体の性能向上にともなうリンクの強化は必須であろう。これを放棄した時期というのが即ち、SiSがチップセットビジネスそのものを諦めた時期、ということなのかもしれない。
今回のまとめ
・Socket 370時代のSiSは、1998年に「SiS600」をリリース。1999年にはワンチップ化した「SiS630」も投入する。独自のローカルフレームバッファーに「ADIMM」対応したが、あまり利用されなかった。
・P4バスのライセンスも取得し、2001年にはPentium 4用にも進出する。しかし自慢の1チップ構成は、サウスブリッジ側の問題でベンダーに嫌われ、その後は2チップ構成に戻すことに。
・Pentium 4向けの初期は、インテルチップセットをしのぐハイエンドを狙った「SiS655」「SiS R658」なども投入する。しかしDRDRAMの失敗もあり、この路線は立ち消えになる。
・バリュー向けのGPU内蔵型でCore 2プロセッサー世代までは対応するものの、SiSのインテル向けチップセットビジネスは2007年の「SiS672FX」で終了する。
この連載の記事
-
第768回
PC
AIアクセラレーター「Gaudi 3」の性能は前世代の2~4倍 インテル CPUロードマップ -
第767回
PC
Lunar LakeはWindows 12の要件である40TOPSを超えるNPU性能 インテル CPUロードマップ -
第766回
デジタル
Instinct MI300のI/OダイはXCDとCCDのどちらにも搭載できる驚きの構造 AMD GPUロードマップ -
第765回
PC
GB200 Grace Blackwell SuperchipのTDPは1200W NVIDIA GPUロードマップ -
第764回
PC
B100は1ダイあたりの性能がH100を下回るがAI性能はH100の5倍 NVIDIA GPUロードマップ -
第763回
PC
FDD/HDDをつなぐため急速に普及したSASI 消え去ったI/F史 -
第762回
PC
測定器やFDDなどどんな機器も接続できたGPIB 消え去ったI/F史 -
第761回
PC
Intel 14Aの量産は2年遅れの2028年? 半導体生産2位を目指すインテル インテル CPUロードマップ -
第760回
PC
14nmを再構築したIntel 12が2027年に登場すればおもしろいことになりそう インテル CPUロードマップ -
第759回
PC
プリンター接続で業界標準になったセントロニクスI/F 消え去ったI/F史 -
第758回
PC
モデムをつなぐのに必要だったRS-232-CというシリアルI/F 消え去ったI/F史 - この連載の一覧へ