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モバイル、ソーシャルメディア、コラボレーションがキーワード

料亭の若女将もおすすめ!ベニオフCEOが語るCloud 2とMS

2010年05月13日 06時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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5月12日、「第1回 クラウドコンピューティングEXPO」において米セールスフォースのCEOであるマーク・ベニオフ氏が基調講演を行なった。ベニオフ氏はソフトウェア販売をメインとするマイクロソフトを時代遅れと切り捨てつつ、第2世代のCloud 2への展望を披露した。

たった3000台のサーバーで
7万2500社を支える

パワフルな講演を披露したセールスフォース・ドットコムCEOのマーク・ベニオフ氏

 基調講演においてセールスフォース・ドットコムCEOのマーク・ベニオフ氏は、メインフレームやクライアント/サーバー型、そしてクラウドコンピューティングに至った過去のプラットフォームの変化に触れつつ、同社の過去の実績をアピールした。現状、同社は年間売上で14億ドルを突破し、ユーザーも7万2500社を超えたという。

 同氏はマイクロソフトの幹部とイベント会場で行なった談話を引き合いに「もしSalesforceがなかったら、私たちが獲得した7万を超えるユーザーは、かわりに10万台のサーバーを導入し、マイクロソフトのソフトウェアを購入したかもしれない。でも私たちはたった3000台のサーバーで済んでいる。これはマルチテナントという仕組みで、リソースを共有しているからだ」と、クラウドコンピューティングの効率性について語った。

 また、同氏は講演のなかで、時代遅れのIT企業としてマイクロソフトを再三引き合いに出し、「マイクロソフトはソフトウェアを販売するという過去のモデルに固持しすぎた。彼らはホットなスマートフォンや検索サイトを出せなかった。この結果、今やアップルの時価総額がマイクロソフトを抜きそうになっている」と語った。ベニオフ氏はiPadのようなモバイルデバイスや.NET Frameworkのような開発環境、ソーシャルメディアなどあらゆる分野で、セールスフォース、グーグルやアップルなどに比べてマイクロソフトが遅れていると挑発した。

iPadを手にモバイルデバイスの可能性について語るベニオフ氏

大手企業も老舗の料亭も
セールスフォースで顧客管理

 さらにベニオフ氏はSalesforce CRMのユーザーである日本通運の営業企画部長の安藤伸樹氏を紹介した。安藤氏は「私たちはさまざまな事業をやっているが、グローバルな事業ではきちんとした情報共有が行なわれてなかった。日報や月報など営業報告のやり方もバラバラだった。だが、Salesforce CRMの導入で営業の生産性向上が実現した。もちろん、クラウドなので、あとから簡単にアプリケーションを加えることができ、ビジネスに役立てることができた」と導入のメリットをこう語った。また、「部下がどんな営業をやったのかを見えるようになった。何度もお客のところに行っても、そのプロセスをきちんと管理することが可能になった」(安藤氏)というマネジメントとしてのメリットも得られたという。

営業部隊での大規模な導入事例を紹介した日本通運の営業企画部長の安藤伸樹氏

 また、Salesforce CRMは経済産業省や日本郵政といった大企業・官公庁だけではなく、小規模事業者に数多く導入されているも特徴だ。こうした小規模な事業者として、ベニオフ氏は料亭の濱田家の若女将を紹介した。濱田家は100年近くの歴史を持つ老舗の料亭で、都内の人形町に店舗を構えるほか、先頃東京ミッドタウンに新店舗を出したという。しかし、大手企業で働いていた経験を持つ現在の若女将は「顧客情報が紙の台帳で管理されたので、同じお客さんが別の店に来ても、顧客の嗜好が共有されていませんでした。また、こうした情報を電話やFAXでやりとりをしていました」とのこと。そこで、若女将はSalesforce CRMを導入し、顧客情報を店舗ごとで共有できるようになったという。

Salesforce CRM導入効果についてコメントする老舗料亭濱田家の若女将。会場がおおいに沸いたのはいうまでもない

新たなクラウド「Cloud 2」の姿はコラボレーション

 同氏はまたCloud 2と呼ぶ、第2世代のクラウドコンピューティングについて言及した。モバイルインターネットが台頭し、ソーシャルメディアがメールを追い越し、さらにPCからスマートフォンへの移行といった近年の状況を例に挙げた。こうしたトレンドを受け、Facebookのようなソーシャルメディアの機能を企業内で安全に実現するものとして紹介されたのが、昨年発表された「Salesforce Chatter」である。

ソーシャルメディアがメールを追い越したという統計を披露

 現在β版になっているSalesforce Chatterのデモも行なわれた。日本法人の担当者は「Cloud 2はコラボレーション、リアルタイム、モバイルがテーマ」と説明し、ソーシャルメディアと同じように会社の情報を集約できるChatterをPC上はもちろん、iPhone上でも操作し、その使い勝手をアピールした。「会社全体の情報のストリームが流れていく。Twitterと違うのは、システムがつぶやくという点」(担当者)とのことで、ユーザーに必要な情報がWebブラウザ上で時系列に表示される。

 アップグレードや機能追加にコストが発生しないのも、Cloud 2の流儀だという。ベニオフ氏は「私たちはChatterでコストを要求しない。グーグルも、アップルも同じだ。しかし、マイクロソフトは今度登場するOffice 2010でいくらのコストを要求するのだろうか?」と述べた。

 ベニオフ氏はChatterを今年中にスタートするとともに、来年東京にもデータセンターを開設する予定も明らかにした。また、富士通とのグローバルな協業やJavaの開発者向けのVMforceも発表しており、着々とクラウドコンピューティング戦略を進めている。同社の代名詞であった「SaaS」という言葉が講演からまったく消えたことは、単なるオンラインCRMのベンダーから、より幅広いクラウドコンピューティングの事業者になったことを表したようだ。

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