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水冷設備を活用できるモジュール型データセンター新製品

日立、動力なしで冷媒を自然循環させるシステム

2010年05月10日 06時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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5月7日、日立製作所は昨年発表したモジュール型データセンター製品を強化し、新たに冷水設備を有効活用できる冷媒自然循環システムを開発した。環境配慮型データセンターに関心の高い欧州から展開を進めるという。

データセンターの消費電力を
最大50%削減する

日立製作所のエンタープライズサーバ事業部の山本章雄氏

 発表会において、日立製作所のエンタープライズサーバ事業部の山本章雄氏は、まず日立グループのグリーンITへの取り組みを紹介した。日立グループでは、IT機器の省電力化、データセンターの省電力化、そしてITによるグリーン化という大きく3つの取り組みを行なっている。このうち今回のモジュール型データセンター製品は、消費電力を最大50%削減するデータセンターの省電力化プロジェクト「CoolCenter50」を実現する重要な要素で、IT機器以外のデータセンター設備の省電力化を実現するものとなる。

 日立製作所のモジュール型データセンターは2009年1月に発表されたもので、省電力、省スペース、短期間での構築という3つの特徴を持つ。米国でのモジュール型データセンターは、コンテナにラックを取り付けて、屋外に設置するというイメージが強いが、日立のモジュール型データセンターは、「暑いものの近くにエアコンを置けば涼しいし、部屋の窓やカーテンを閉めれば、冷却効率は上がる」(山本氏)というシンプルな発想に基く局所冷却・パーティション化をコンセプトとする。

ラックの横に冷却装置を設置する日立モジュール型データセンターの概要

 いわば狭いスペースにラックを集約し、ブレードサーバーなどの横にラック型の空調機や分電盤を配置するというもの。これによりラックやモジュール単位での増設が可能になり、スモールスタートも可能になるという。現状、まだ導入は多くないが、企業のサーバールームや大手のデータセンターまで約160件の引き合いがあったという。

冷媒の循環に動力が要らないシステム

日立製作所のエンタープライズサーバ事業部の澤本英雄氏

 新製品に関しては同じくエンタープライズサーバ事業部の澤本英雄氏が説明を行なった。今回発表されたのは従来のモジュール型データセンターを強化する製品で、日立プラントテクノロジーと共同開発した「冷媒自然循環システム」が大きなポイントとなる。「特にヨーロッパでは環境配慮型のデータセンターの関心が高く、水や外気による冷却システムの導入も進んでいる」(澤本氏)とのことで、海外で多く利用されている冷水設備を有効活用できる。

 冷媒自然循環システムは、従来提供してきた空冷式ラック型空調機とは別に追加される技術で、ラック型空調機とリアドア型の冷却装置の2製品が用意される。最大の特徴は、機器を冷却するための冷媒を循環させるための動力(ポンプやコンプレッサー)がいらないこと。排熱により気化した冷媒が上昇する力と、熱交換機で冷却された冷媒が液化して下降する力を用いることで、自然循環させる。

ポンプなどの動力を必要としない冷媒自然循環システムの概要

ラックの横に冷却装置を設置する

 チラーによる冷媒冷却だけではなく、寒い外気を取り込んで冷却する「フリークーリング」を取り入れることも可能で、通常に比べて空調電力を最大67%削減できるという。また、この冷媒自然循環システムに対応した新型のラック型空調機は幅も従来の半分になっており、省スペースにも貢献する。

 一方、データセンター内の空調機器の制御や自動化を実現する監視制御盤も新たに追加された。単なる見える化にとどまらず、温度や風量の調整、予備機への切り替えや動作のローテーションなどの制御を自動化することが可能になる。

 今回発表された冷媒自然循環システムは、いち早くヨーロッパで展開し、その後中国、その他の地域へ事業展開していく。米国については、前述のとおりモジュール型データセンターの概念がやや異なることもあり、マーケティング調査を進めている状態だという。

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