VIAチップセットの歴史 その1
良くも悪くもインテルに振り回されたVIAチップセット
2010年05月10日 12時00分更新
インテルの自滅でシェアを広げたApollo Pro 133
Super 7向けチップセットは、Apollo MVP4で打ち止めとなっている。そのちょっと前から、製品の主流はインテルのSlot 1/Socket 370向けと(次回説明する)AMDのSlot A/Socket A向けに移り始めていたためだ。その最初の製品が「Apollo Pro」で、これはPentium ProのSocket 8とPentium IIのSlot 1の両ソケットに対応する製品である。
もっとも、Apollo Proを出荷した1998年7月は、まだVIAはSlot1のバスライセンスを正式に取得しておらず、その意味ではフライング出荷な製品である。それもあってか、採用例はごくわずかに留まった。これに続く「Apollo Pro Plus」は正式にバスライセンスを取得した初の製品であり、こちらは大々的に販売された。といっても、スペック的にはインテルの「Intel 440BX」と同等だったので、安定性の高さやオーバークロックマージンの多さを誇る440BXには、なかなか勝てなかった。
この状況が変わるのは、133MHz FSBに対応した「Apollo Pro 133」からである。当時インテルは、Direct RDRAMを使う「Intel 820」を133MHz FSB対応チップセットとしてリリースしたものの、Direct RDRAMのトラブルで自滅することになったのは28回で説明したとおりだ。
これに対し、SDRAMを使いながら133MHzを公式サポートするApollo Pro 133は、手頃な選択肢として広く受け入れられた。またVCMをサポートしていることも、台湾大地震の後はポイントのひとつとして判断された。
このApollo Pro 133をAGP 4X対応にするとともに、サウスブリッジをやや強化したのが1999年9月にリリースされた「Apollo Pro 133A」である。インテルの対抗製品である「Intel 815」がリリースされるのは2000年6月の事であり、それまではこのApollo Pro 133Aが、市場を席巻しかねない勢いで広く利用されるに到った。
2001年にVIAは、DDR SDRAMに対応した「Apollo Pro 266」や、TualatinコアPentium IIIの信号レベル変更に対応した「Apollo Pro 266T」をリリースする。しかし、この頃になるとインテルはCPUをPentium 4に移行してしまい、Socket 370のマーケットはCeleronなどのバリュー向けとなってしまった。そのためDDR SDRAM対応のメリットもそれほど大きいものではなく、このApollo Pro 266/266Tを搭載した製品は、あまり市場にも出回らなかったと記憶している。
GPU内蔵版のApollo ProMediaは性能面で振るわず
MPEG-2対応のProSavage PM133で巻き返す
話は少し戻るが、Apollo Pro 133をベースにTridentのrCADE 3Dを内蔵した統合チップセットが「Apollo ProMedia」である。正直言ってrCADE 3Dのグラフィックス性能はたいしたものではなく、Windows 9xの表示には十分でも、DirectXの描画性能(DirectX 6対応)はお世辞にも高いとはいえなかった。またこの時期、若干はDOSのゲームも残っていたが、これらを実行するにもやはり性能は物足りなかった。
強いて言えば、MPEGのハードウェアデコーダが搭載されているのがIntel 810などに対するアドバンテージだったが、これをサポートするDVDプレイヤーソフトがほとんどなかったため、性能的にはIntel 810と同等レベルといったところであった。続く「Apollo PLE133」は、むしろ低価格向けである。
だが、Apollo Pro 133Aをベースに「Savage 4」GPUコアを統合した「ProSavage PM133」は、それなりに性能の引き上げもあり、Intel 815と互角以上の戦いが可能になっている。一応DirectX 7をサポートしており、またMPEG-2の再生支援も搭載され、しかもこの機能をサポートするソフトウェアがそれなりにあった。400MHz程度のCeleronを搭載したProSavage PM133マシンで、一応DVDがコマ落ちをほとんど無しに再生できたのは、この時期のマシンとしては優秀といえる。
ちなみにProSavage PM133が登場する前に、このProSavage PM133からSavage 4コアを無効とした「Apollo Pro 133Z」が市場に登場している。
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