書店に足を運ぶ意義が問われる、大手書店
「あれ、ここにあったハズの書店が喫茶店に変わってる……。仕方ない、ほかをあたるか」
「社長、看板をよく見てください。書店のままですよ(微笑)。最近は電子書籍が増えてきましたから、本棚の数が減っているんです。その代わりに、カフェが併設されたり、座ってゆっくり読めるスペースが増えているんですよ」
「そうなの!? 久しぶりに来たけどずいぶん変わったなー。つーか、本を見ないで、席で端末いじくってる人のほうが多いぐらいじゃないかっ! 意味が分かんないよ」
「(あきれ顔で)社長はまず、この電子書籍端末の使い方を覚えるところから始めたほうがいいですね……。(カバンの中を探る)店内ならネットに自由につなげるし、取り扱っている本はこの端末から全部読みますから」
「え? だって本なら目の前にあるじゃない。」
「単に時間をつぶすために来ている人も多いんです。本文をキーワード検索して目的の本を見つけたほうが早いし、面白い書籍だったらそのままダウンロード購入して持ち帰れて便利ですから」
立ち読み=古典的フリーミアムモデル
iPadの登場で、Slate(板型コンピュータ)の普及が一気に進みそうだ。無料OSであるAndroid搭載の端末であれば、1台あたり1万円台という低価格なものもすでに登場している。
北米最大の書店チェーンBarnes & Nobleが発売した電子書籍端末nookもAndroidを採用している(価格はKindleと同じ259ドル)。iBooksのように電子書籍が購入できるだけでなく、書店内であれば無線LAN経由で自由に本を「立ち読み」することができるなどユニークな機能を備える(関連記事)。
国内でも大規模チェーンであれば、店内を無線LAN接続可能にした上で、端末越しに検索/閲覧/購入まで一括して行なえるシステムを導入することができるだろう。
クマ社長とHAL子さんが探しているのは、企画書の中で使えそうな調査資料や、写真集などの素材だ。書名だけでは探し当てられない本でも、本文検索して端末で立ち読みすることで、すぐに目的のものに行き着くことができる。
書店側も、立ち読みによる本の損傷を防ぐことができ、また、アクセスの多い本の告知や仕入れを増やすなど販促の面でもメリットがあると言えそうだ。立ち読みという昔ながらのフリーミアムモデルとも言えるだろう。

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