出版社は低廉なSlate端末の使い道を考えるべき
このように、それぞれの特徴を出して、そこに特化していくことで書店の未来は描けると考えている(もはや「書店」という呼び方が適切なのかも考えたほうが良いのかもしれないが)。
一方、途中で触れたSlate端末の低廉化については、もう一つ思うことがある。それは、出版社にとってもこれは大きな武器となるということだ。
オープンな仕様で展開されるAndroid OSは、無料のAdobe Digital Editionsと組み合わせることで、電子書籍端末の可能性も広げている。
連載第一回で、黒船の到来という風に書いたが、AmazonやiBooksをプラットフォームと選択しなくても、書籍コンテンツを直販できる仕組みが整いつつあると言えるだろう。
あくまで一例だが、出版社が特定の著者やレーベルを、自社ブランドのSlate端末専用に提供することで、流通コストを抑え、ゲリラ的に収益性の高いビジネスを展開するといった未来像もあるはずだ。
次回は、実際に電子出版に取り組むマンガ家にもインタビューし、その実践例を紹介したい。
著者紹介:まつもとあつし
ネットベンチャー、出版社、広告代理店などを経て、現在は東京大学大学院情報学環修士課程に在籍。ネットコミュニティやデジタルコンテンツのビジネス展開を研究しながら、IT方面の取材・コラム執筆、ゲーム・映像コンテンツのプロデュース活動を行なっている。デジタルハリウッド大学院デジタルコンテンツマネジメント修士。著書に「できるポケット+Gmail」など。公式サイト松本淳PM事務所[ampm]。Twitterアカウントは@a_matsumoto

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