「精度」の高い抵抗膜式
ペンでの書き込みクオリティーは良好
では、最大の変化点である「タッチ」の面を見ていこう。タッチというとiPhoneやiPod touchのようなものを思い浮かべがちだが、PC-T1は少々異なる。センサーには、iPhoneなどで使われている「静電容量式」ではなく、PDAなどで長く使われている「抵抗膜式」のものが採用されているためだ。
静電容量式は指が触れた際の誤動作が少なく、液晶ディスプレーの画質にも悪影響を与えにくい。そのため、iPhoneの成功以降、多くのタッチ対応機器で採用されている。その一方で、1点の検知精度が低く、ペンで文字を書き込むような用途には向かない、という欠点がある。
対する抵抗膜式は、マルチタッチが難しいこと、液晶ディスプレーの最前面に「膜」を貼るために画質が落ちやすいことなどが欠点ではある。しかしコストが低く、ペンを使っての高精度な入力に向く。
PC-T1でシャープは、「ペンでの書き込み」に注力したようだ。付属の手書きノートソフト「Xournal」は、手書きのメモをそのまま残す、というシンプルなものではあるが、PDFファイルの上に直接手書きできるのが特徴だ。そうして書き込んだものをPDFで再保存したり、メールなどで送ることもできる。
「その程度?」と思われるかも知れないが、これは意外とニーズが多いにもかかわらず、出荷状態で簡単にできる機器は少ない。タブレットPCでも、PDFへ書き込むならば、別途ソフトを導入せねばならない。
PC-T1の抵抗膜型タッチセンサーは、技術的には決して特殊なものではないが、精度・画質ともに悪くない。試作機ゆえか、まだまだ未調整と思える部分もあるが、殴り書きにもそれなりに追従する。「紙のように縦横無尽に……」とはいかないが、そもそもの処理能力がタブレットPCに比べ大きく劣ることを思えば、納得できるものだ。少なくとも、同様の機能を持っていたソニーの「VAIO U」や富士通の「FMV LOOX U」よりも書き心地はいいし、液晶ディスプレーの表示品質も高く思える。
文字入力は、一文字ずつ行なう「手書き入力」と、いわゆるソフトウエアキーボードの両方が用意されている。ユーザーインターフェース的にも、タブレットPCのそれにかなり近い。最小化すると画面端に「タブ」が現れ、再度タップするとウインドウが開くところも似ている。
Windowsの手書き入力とは異なり、複数の文字をどんどん書いて次々と認識させることは難しく、1文字ずつの認識となる。ペン入力精度の高さから、認識率はかなり高いと感じたが、認識速度はパソコンほど速くない。だからURLの入力など素早く入力したいようなシーンでは、ソフトウエアキーボードを使った方がいい。
もちろんローマ字入力からの変換もできるので、手書き入力を使わなくてもすべての機能が使える。手書きウインドウが半透過になっているので、狭い画面でも操作性を大きくスポイルすることはないが、「ソフトキーボードをタッチしたはずなのに、なぜか背景のメニューをタッチした扱いになっていた」という現象も若干見られた。この点は、まだソフトが未成熟であるゆえだろうか。
さすがに長文を入力する際は、キーボードが欲しくなる。その場合には、Bluetoothキーボードを併用するのがお勧めだ。今回は折りたたみ式のものを含め、2種類ほど手持ちのものを使ってみたが、操作感は良好だ。ノートパソコン的にタッチタイプで長文入力をするなら、PC-Z1のキーボードより「自分の好みが選べる」分だけプラスかも知れない。
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