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西田 宗千佳のBeyond the Mobile 第46回

タッチパネルとなった新NetWalkerを試作機でチェック

2010年04月28日 12時00分更新

文● 西田 宗千佳

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「縦持ち」での読書は快適だが
ウェブは「横」でしか使えない

 このサイズに1024×600ドットの液晶ディスプレー+シャープの「LCフォント」という組み合わせは、相変わらず魅力的だ。ウェブを表示した際の凝縮感・読みやすさは、パソコンとは違う魅力を感じる。

 その魅力を生かしたニーズが「電子書籍」と「辞書」だ。PC-Z1では電子辞書モデルが用意されていたし、シャープは以前から「XMDF」をファイルフォーマットに据えた「電子ブック」ビジネスを展開中。PC-T1にも、「電子ブックリーダー」と「辞書ソフト」が組みこまれている。

PC-T1内蔵の辞書ソフト

PC-T1内蔵の辞書ソフト。辞書の串刺し検索などもできる。辞書の表紙から「検索用辞書を選ぶ」機能が追加された

「蜘蛛の糸」を「縦持ち」で表示

「電子ブックリーダー」を使い、内蔵された「蜘蛛の糸」(芥川龍之介)を「縦持ち」で表示。非常にきれいな書体で、きちんとルビ入りで表示される

 前者は、著作権が切れた名作96作品と、三笠書房提供によるビジネス書が5点バンドルされた形で、購入直後から読める。PC-T1を「縦持ち」して読むと、そのクオリティーには驚かされる。追加コンテンツは、シャープ運営の「NetWalkerライブラリー」のほか、「青空文庫」などからもダウンロード可能だ。

 ただし、このソリューションに過大な期待を抱くのは禁物だ。現在話題となっている電子書籍の世界では、XMDFは「日本固有」のフォーマットということもあり、主流とは言い難い。ソフトの使い勝手にも不満が残る。シャープとして「他社のソリューションを圧倒できる、電子書籍ビジネスへのコミット」が見えてこないと、この機能を主軸に商品を選ぶのは難しい。

 また、「縦持ち」での表示を見てしまうと、PC-T1には大きな不満点が見えてくる。PC-T1が縦持ちで使えるのは、この電子ブックリーダーの中だけに限られているためだ。美しい液晶ディスプレーとLCフォントを生かし、「広い縦画面でウェブを見たい」と思ってもできない。パソコンでは当たり前にできることだが、現状のNetWalkerでは難しい。せっかくのハードウエアも、この点で魅力をスポイルされている。

PC-T1でのウェブ表示

PC-T1でのウェブ表示。機能・クオリティーはPC-Z1のものとまったく変わりない。横画面でしか使えないのが残念

 タッチということと価格帯から、PC-T1はiPadと比較されるだろう。正直なところ「普通の人向け」としては、PC-T1はまだ荒削りすぎて、比較対象としては厳しい。タッチセンサーや液晶ディスプレーのクオリティーを生かし、ビジネス向けの「専用端末」としてのニーズも検討されているようで、だとすれば、PC-T1の狙いも見えてくる。

 購入するならば「よりパソコン的な使い道を、タッチパネル端末に求めている人」向けといえるだろう。


オススメする人
・出先で「PDFに書き込み」をするワークスタイルが多い人
・タブレットでUbuntuを使いたい人
NetWalker PC-T1の主な仕様
CPU Freescale i.MX515
メモリー 512MB
ディスプレー 5型ワイド 1024×600ドット
ストレージ フラッシュメモリー 8GB
無線通信機能 IEEE 802.11b/g、Bluetooth 2.1
サイズ 幅150×奥行き90×高さ18.0~21.3mm
質量 約280g
バッテリー駆動時間 約6時間
OS Ubuntu 9.04
予想実売価格 4万7000円

筆者紹介─西田 宗千佳

1971年福井県生まれ。フリージャーナリスト。得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。主に取材記事と個人向け解説記事を担当。朝日新聞、読売新聞、アエラ、週刊東洋経済、月刊宝島、PCfan、YOMIURI PC、AVWatch、マイコミジャーナルなどに寄稿するほか、テレビ番組・雑誌などの監修も手がける。近著に、「美学vs.実利『チーム久夛良木』対任天堂の総力戦15年史」(講談社)、「クラウド・コンピューティング仕事術」「iPhone仕事術!」(朝日新聞出版)、「iPad vs.キンドル」(エンターブレイン)。


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