「FlashのiPhoneアプリ変換機能は予定通り、CS5に搭載して出荷する。しかし今後はこの機能に投資しない」。4月22日、東京都内で開かれた戦略発表会の席上、米アドビ システムズでCS(Creative Suite)製品を担当するジョン・ロイアコノ上級副社長はこう明言した。
アドビが5月下旬に発売する「Flash Professional CS5」では、FlashコンテンツをiPhoneアプリに変換する「Packager for iPhone」が目玉機能になるはずだった。だが、CS5のローンチ直前の4月8日、米アップルは「iPhone OS 4.0 SDK」(ベータ版)のライセンス規約を変更。アップルが指定するプログラミング言語以外でのAPIへのアクセス、クロスコンパイラによるアプリ開発を禁止した(関連記事)。多くのFlasher(Flash開発者)の注目を集めたPackager for iPhoneは、「機能として搭載はされるが実質的に使えない」「CS5限りで開発終了」――という幻の機能になることが事実上決定した。
グーグルとの協業でFlashをオープンなプラットフォームに
「Flashをどのようなデバイス、スクリーンでも再生できるようにしたい。我々はどんな企業とでも協業する用意ができている」(シャンタヌ・ナラヤン社長兼CEO)というアドビと、プラットフォーム内で完結し、一貫したエクスペリエンスを提供するアップルの考えには大きな隔たりがある。アップルは先日、「iAd」によってiPhoneアプリ向けの広告配信に乗り出すと発表したばかりだ(関連記事)。
アドビは、モバイル端末やデジタル家電など、さまざまなデバイスへFlash Playerの搭載を目指すプロジェクト「Open Screen Project」を進めている。Open Screen Projectにはグーグル、インテル、シスコ、ノキア、サムスンなど、アップルをのぞく主要なプレーヤー70社が参加。組込み用Flash Playerのライセンス料撤廃、SWFファイルの仕様公開など、Flashのオープン化へ向けて舵を切るとともに、Flash Playerの一本化(現在はケータイ向けにはFlash Liteが使われている)によるコンテンツの再利用性向上にも力を入れている。
「プラットフォームをクローズにする、というアップルの決定は、コンテンツプロバイダーにとって配信先の選択肢を狭めるものだ。我々が目指しているのは、コンテンツやアプリケーションを一度オーサリングすれば幅広いデバイス、OSに向けてパブリッシュできること。それが業界やユーザーが求めていることだ」(コーポレートデベロップメント担当のポール・ワイスコフ上級副社長)
2010年上半期中にリリース予定の「Flash Player 10.1」には、Android、BlackBerry、Symbian OS、Palm webOS、Windows Mobileといった多くのスマートフォンが対応する予定。「グーグルなどのオープンなパートナーと協業していきたい」(ナラヤンCEO)というアドビとアップルの対立はますます激しくなりそうだ。
