CS4の発売から約1年半。4月12日、アドビ システムズは「Adobe Creative Suite 5」(CS5)日本語版を発表した(関連記事)。Webデザイナー向けの「Web Premium」、DTPデザイナー向けの「Design Premium」「Design Standard」、映像クリエイター向けの「Production Premium」、全部入りの「Master Collestion」のスイート5製品と、単体14製品からなり、発売は5月28日の予定。価格は、Web Premiumが23万6250円(アドビストアの価格)で、アドビストアでは12日から予約を受け付けている。
Flash関連で新製品が2つ、iPhoneアプリ変換機能は予定どおりリリース
アドビは、2008年11月、Flash関連技術/製品からなる「Adobe Flash Platform」を発表。モバイルや家電、エンタープライズRIA(リッチ・インターネット・アプリケーション)など、あらゆるデバイス環境や用途におけるFlash/Adobe AIRの普及へまい進している(関連記事1、関連記事2)。CS5にはそうしたアドビの姿勢が強く反映されており、Flash製品の強化が際立っている。
Webデザイナー向けのスイート「Web Premium」には、新たに「Flash Builder 4 Standard」と「Flash Catalyst CS5」が加わった。Flash Builderはもともと「Flex Builder」として単体でのみ販売されていた製品で、ActionScript 3.0(AS3)でFlashアプリケーションを開発するためのIDE(統合開発環境)だ。
従来からスイートに含まれる「Flash Professional」がタイムラインベースで、アニメーションやゲームなどを開発するクリエイター向けのオーサリングツールだとしたら、Flash Builderはコードをゴリゴリ書くRIAプログラマー向けのツール。Flash BuilderがCSファミリーに加わったことで、Flash Professional/Flash Builder間の連携がとれるようになり、Flash Professionalの外部エディターとしてもFlash Builderを使えるようになった。
もう1つの新製品「Flash Catalyst」は、RIAのUIを制作するためのデザインツールだ。2007年に「Thermo」というコードネームで発表されていたもので(関連記事)、IllustratorやPhotoshop、Fireworksで描いたモックアップを取り込み、Flashコンテンツへ変換する機能を持つ。たとえば、Illustratorでデザインしたボタンやスライドバーなどの“絵”を動的なUI部品に変換し、Flash Builderへ引き継いでアプリケーション開発する、といった使い方ができる(関連記事)。
Flashファミリーの要となる「Flash Professional CS5」にも、多数の新機能が搭載されている。縦書きや縦中横などの日本語表現に対応した新しいテキストエンジン「TLF」、使用頻度の高いAS3のコードサンプルを収録した「コードスニペット」、FlashプロジェクトファイルのXML化(XFL形式の採用)など、見所は多い。
一方、ベータ版の段階で話題になっていた「Packager for iPhone」(FlashコンテンツをiPhone/iPadアプリに変換する機能)は、予定通り搭載されるものの、同機能で作成したアプリが実際にApp Storeで販売できるかは4月12日現在、不透明となっている。というのも、4月9日にアップルが発表した「iPhone OS 4 SDK」の規約ではObjective-C/C/C++およびJavaScript以外の言語での開発が禁止されたからだ(ことの経緯は、ブログ「MACお宝鑑定団」に詳しい)。
新製品の目玉が、事実上使えない可能性がある、というのは異常事態というしかない。アドビはPackager for iPhoneについて、プレスリリースに「アップルの要件ならびに承認に影響をうける場合がある」と注記しており、現時点ではアップル、アドビ双方の今後の動向を見守るしかなさそうだ。