弥生SaaSの今後
さて、現在Windows Azure上で開発を進めている弥生SaaSですが、どのように発展していくのでしょうか。残念ながら広く一般の方に弥生SaaSをご覧頂けるのは少々先になります。今年の夏~秋には、クローズドでのβプログラムを開始する予定ですが、広く一般の方に見て頂けるオープンのβプログラムは来年の春頃を予定しています。そして来年の夏から秋に正式な商用サービスとして開始したいと考えています。
正式な商用サービスとして立ち上がった際にも、既存の製品、たとえば弥生会計とは直接は競合しないでしょう。前回お話しした通り、弥生SaaSは弥生会計とは異なるアプリケーションですし、特に当初は、弥生会計と機能面だけで比較した場合には見劣りするでしょう。ただ、もっと気軽に使いたい、これまでの弥生会計ではtoo muchだったというお客様には訴求できるものと考えています。
弥生SaaSが発展を続ければ、やがて既存のデスクトップアプリケーションと比較の対象になります。お話ししたように、モジュールをSaaSとデスクトップアプリケーションで共有していきますから、当初は機能面での差があっても、徐々にその差は詰まっていきます。
その時、SaaSとデスクトップアプリケーションのどちらが優位になるのか、あるいはどういった割合になるのか。これはよく聞かれることなのですが、私の答えはいつもこうです。「わかりません」。それはお客様が決められることですから。
弥生としては、お客様がどちらでも選べるというのが一番重要だと考えています。ただ選んで頂く際には、必要以上に悩まなくて済むように、パッケージを買った方が徐々にSaaSに移行する、あるいは、SaaSを利用していても一部機能はデスクトップでも利用できるといった形式も考えていきたいと思っています。
あるタイミングになれば、何がSaaSで、何がデスクトップで、と意識されること自体なくなるでしょう。少なくとも弥生としては、意識しなくて済む仕組みを作りたいと思っています。実際問題として、Silverlight上で動くということは、クラウドベースでもありながら、ローカルでも動作するわけですから、境界線はきわめてあいまいです。
さて、前回と今回で、なぜ弥生がSaaSを?そしてなぜWindows Azureを?という疑問にはお答えできたのではないかと思います。そして、テクノロジーに関して知見をお持ちの皆さまだからこそ、弥生の将来について、ますます期待して頂けるのではないかと自負しています。一方で、弥生SaaSが本格的に立ち上がるのはまだ先ですし、当面は既存の製品を安心してお買い上げ頂ければと思っています。今後も技術的ロードマップがしっかりしていることはご理解頂けたものと思いますし、当然のことながら、デスクトップアプリケーションへのお客様の投資が無駄にならないようにしたいと考えています。
次回は、ちょっと方向性を変えて、エンジニアのキャリアについて、お話しさせて頂きたいと考えています。多くのエンジニアが抱えている、自分は今後も食っていけるのだろうか、という漠然とした不安。この不安に対し、私なりに解を考えてみたいと思っています。
岡本浩一郎
1969年3月、横浜生まれの横浜育ち。
野村総合研究所、ボストン コンサルティング グループを経て、2000年6月にコンサルティング会社リアルソリューションズを起業。
2008年4月、弥生株式会社 代表取締役社長に就任。「かんたん、やさしい」そして「あんしん」な弥生シリーズを広めるべく、全国行脚中。
ブログは弥生社長の愚直な実践。Twitterはkayokamoto。
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