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もうバイトは雇わない——成長ネットショップ逆転の発想 (2/2)

2010年04月21日 13時00分更新

文●三浦たまみ

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商品管理はショップの方向性を決める重要ポイント

 商品点数が増え始めた時の対応も、中小ネットショップの“その後”の方向性を決める重要なポイントといえます。商品数を増やさず、少人数でもやっていけるよう現状維持でいくか。ショップの規模を拡大するための品揃えを考えるか――。「漫画」という商材に大きな手応えを感じていた安藤さんは、後者の「拡大」を選択。悩んだ挙句、千葉県内にある広い倉庫を借りて、商品管理だけでなく、発送までの一連の流れをすべて外注業者に任せることを決意したといいます。

「今後、商品の扱い点数や在庫が増え続けてもフレキシブルに対応できる態勢を整えるには、割高になってでも外注に出すべきだという結論に至りました。商品点数が増えれば、それに伴い梱包・発送にも多くの人手が必要になり、アルバイトを雇う問題が必ず発生します。ならば、物流部分はすべてプロにお任せし、私たちは販促活動など、自分たちにしかできないことに力を注いでいこうと考えました」

 「自分たちにしかできないこと」を突き詰める姿勢は、「現状維持」を選んだネットショップにとっても非常に大切なことです。ネットショップの運営ではやるべきことが山ほどあるなかで、優先順位をつけ、順位の低いものに関しては思い切って見直す、あるいは外注に出す選択も考えるべきです。

 「拡大」を選んだ安藤さんの場合、ネックになっていた大量の商品管理の問題を外注業者を利用することで解決し、その分の労力を商品企画や販売戦略の検討に割けました。その結果、現在、取扱商品を2000タイトルにまで増やすことに成功しています。売上が伸びるにつれて確実にやってくる在庫や人手不足の問題ですが、こうした地道な努力を1つ1つ積み重ねていくことが、さらなるステップアップ――すなわち、経営の視点が備わったショップへと成長していくことに結びついていくのです。


――ネットショップのエキスパートが斬る!――

 イズムラボ株式会社代表の中村賢一さんに、ネットショップ経営における「人を雇うとき」に心がけるべきポイントについて伺いました。

 売上が順調に伸びるに従い、店主が最も頭を悩ませるのは、「人を雇うタイミング」だと思いますが、その前に検討してほしいことがあります。それは、日々の運営のなかで、「やらなくてよいこと」を洗い出すこと。店主のなかには、定期的にメルマガを発行するだけでなく、「店長ブログがいい」と聞けばそれに手を出す、「コミュニティサイトを活用すべきだ」と思えばコミュニティを立ち上げる、「アフィリエイトがよさそう」と判断すればトライするなど、あれもこれもと手を出している人はたくさんいるはずです。

 ネットショップは、日々の運営だけを見ても、受注管理や売上管理、梱包発送作業、さらには更新作業と、やることは実に多岐に渡ります。それをこなすだけでも大変なのに、ブログもコミュニティも……となれば、限界が生じるのは時間の問題。どれもが中途半端になってしまえば、逆にお店に対する信頼を低下させてしまいます。まずは現時点でやるべきこと、やらなくてよいことを明確にし、場合によっては優先順位の低いものは切り捨てるようにしていくべきだと思います。


マニュアルを作成し、従業員の「入れ替わりリスク」を下げる

 検討の結果、人を雇うことを決めたら、事業計画に照らし合わせて人件費にどの程度予算を立てられるか考えていきます。基本的には、アルバイトや外注を上手に活用し、ショップの運営が安定してきた段階でさらなる飛躍を目指す場合に、正社員の採用を検討すべきだと思います。特に外注は、今、自分が時間が割けずに困っていること――サイトの構築や更新作業、梱包や発送業務、メルマガ執筆等――に対して、プロの視点で対応してくれますから、多少費用がかかっても、依頼する価値は十分にあるはずです。

 ただし、たとえプロに頼む場合でも丸投げは禁物。たとえば、新たなページのサイト構築を制作業者に依頼する場合は、時に自分で手書きのラフなどを書きながら、どんなページにしたいのか、そのコンセプトを詳しく伝えるなど、あくまでも主導者は自分であるという意識のもと、折衝していく姿勢が必要です。

 正社員の採用は、人件費こそかかりますが、毎日一緒に働くわけですから、もっとも意思の疎通を図ることができ、社内の作業効率を飛躍的にアップできる可能性を秘めています。ただし、一人前になるまでは、それなりの教育コストがかかることを覚悟しておくべきといえるでしょう。また、急に辞めてしまったというリスクを考え、できる限り、作業は細かくマニュアル化し、他の誰でも代わりを務められるようにしておくべきです。

 忘れてならないのは、ネットショップの店主にとってもっとも重要な仕事は、商品企画と販促の戦略を立てること。利益さえ出るなら、それ以外の部分はすべて外注に出しても構わないほど、要となる部分です。何を仕入れ、どう売っていくか。この2点に全力を注げるよう、人を賢く雇いましょう。


中村賢一イズムラボ代表取締役社長。サイト制作、Webコンサルティングを手がける。Yahoo! ショッピング、Yahoo! オークション、ビッダーズの出店者向けのセミナー講師経験を活かし、売れるウェブサイトを指南。「デジタルハリウッド」の講師としても活躍している。


協力:佐川フィナンシャル株式会社(http://www.sagawa-fin.co.jp/

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