広がっていくAR技術の応用形
暦本さんの研究のひとつに「マルチユーザー型AR」というのも考えられていた。同じ空間の中をふたりで別々にモニターでのぞいてAR的に現実共有するというもの。ふたりから見えるCGはそれぞれの角度から影が見えて背景があるのでとてもリアルに見えるのだ。
この技術は今、現在開発中のマルチユーザーでのARゲームに生かされているという。数人でカメラ付き携帯ゲーム端末を使って同じフィールドをのぞき込むと、キャラクターが出てきてゲーム世界を共有しながら対戦などができる作品も作られる可能性が高い。実現したらかなり楽しそうだ。
ほかにもマーカー型ARを使った絵本が研究されている。紙にマーカーが印刷され、カメラでマーカーを写すとオブジェクトが飛び出すしくみだ。開発当初はシリコングラフィックス社のワークステーションを使っていたのが、マシンが軽量・高性能化したことで、最近は携帯でもできるようになった。ARが盛り上がった背景には、ARを動かせるだけのマシンやモバイル機器の隆盛があったのである。
また暦本さんは、1998年にソニーのVAIO C1シリーズでARソフトをバンドルして、新聞にマーカーを出すというARキャンペーンを展開した。残念ながら時期尚早だったのかあまり話題にはならなかったが、これがARがコンシューマーに向けて製品化された記念すべき1作目だろう。
そして、暦本さんがARの可能性を示す例として挙げたのが、自動車のキャンペーン。マーカー型ARで自動車のプロモーションを行なうというものだ。マーカーが印刷されているボードをカメラで写せば、車が出てきてお店でプレゼンできるという強みがある。
CGなので実物と違いボディーカラーを変えるのも簡単で、分解してパーツを見せるなんてこともできる。CGを実物大で見せることも可能なのだそうだ。他には、家具を買うときに自分の家をARで見て、仮想の家具を置いて部屋に合う・合わないを調べて見る、ということもできる。ARがどんどん生活に密着してくるようだ。
(次ページへ続く)
この連載の記事
-
第4回
デジタル
経済産業省によるAR -e空間- -
第3回
デジタル
変化を続け、成長するモバイルAR -
第2回
デジタル
ARは広告業界の次世代ツールになりえるか? -
第1回
デジタル
ARによる新しいエンターテイメントの形 -
デジタル
AR~拡張現実~人間の“現実感”を高めるテクノロジー - この連載の一覧へ