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AR~拡張現実~人間の“現実感”を高めるテクノロジー 第5回

本当の「AR」とは? ARの歴史と未来の姿を追う!

2010年04月20日 12時00分更新

文● 丸子かおり

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ARの本当の意味は「人間が強化される」!

 これまでマーカー型のARの話をしてきたが、現在、暦本さんの研究のひとつにマーカーレス型ARをいかに拡張するかという課題もあるそうだ。マーカーレス型の例をあげると、セカイカメラのように位置GPSと電子コンパスを使っているタイプなどである。暦本さんが研究するのは、画像特徴を用いて、渋谷の街にAR情報がピッタリと張り付いて正確な情報を提供するというもの。

 これは、GPSはもちろん、街の風景データベースと風景をマッチングさせることでマーカーのように位置あわせしているそうだ。ただし、この方式はまだ計算コストがかかるため、携帯やiPhoneで動かすためのアルゴリズムの高速化に取り組んでいるとのことだが、実現すると渋谷の街情報を詳しく見ることができたり、AR限定のタイムサービス広告を出すなど、ユーザーもお店側もメリットが大きい。

暦本さんが研究している「マーカーレスタイプ」AR。渋谷にある建築物や人物に情報が張りつくように表示されている (提供:東京大学大学院情報学環 暦本研究室)

 ARというとよく言われるのが、ロボコップやドラゴンボールのスカウターのようなイメージだが、暦本さんは「人間の能力を拡張する」という方向性にも着目している。端末をかざすだけだと、どこに何を見えているかわからない。暦本さんは人がどこを見ているかをもっと厳密に分析すべく、目のセンサーとARを組み合わせた研究も手がけているのだ。

 特殊な機能を持ったメガネをかけて、どこかにフッと目を向けると情報がパッと出てくるようなコンセプトを考えているという。たとえば、その場でARの情報を出すだけじゃなく、昨日会った人の名前が思い出せないというときに瞬時に教えてくれる、人の記憶をサポートしてくれる「メモリーのAugment(強化)」を目指しているのだそうだ。

現在試作中のAR機能を備えたメガネ「Eye activity sensing system 」。右目部分にセンサーがついている

 「ARが人間の能力を拡張することができる」ということの中で、特に目の見る能力の拡張性は高いそうだ。カメラや画像認識と組み合わせれば、まばたきしている、どこかを見ている、横に視線が動くのは本を読んでいるときなど、視線の動きで人のアクティビティがかなり判別できるとのこと。何かを見ていて、視線がコンピューターのデータベースに記録されている場所やモノに合うと「今、見ているものと同じ写真がデータベースに見つかりました」と表示させることもできるかもしれないのだ。

 また、知ってる人を見ると「ああ、あの人だ」と思いだすように、自分が見ている顔と記憶をマッチングして名前などの情報が出てくるARも今後可能になるかもしれないという。ARの本当のスゴさが感じられる話だ。

(次ページへ続く)

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