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Windows Serverで学ぶサーバOS入門 第4回

命運の分かれたターミナルサービスとMacintoshサービス

Windows Serverの機能はITの動向で変わる

2010年02月16日 08時30分更新

文● 横山哲也/グローバルナレッジネットワーク株式会社

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サーバー機能の流行

 サーバーの役割には流行がある。ファイルサーバーとプリントサーバーの重要性は今も昔も変わらないが、そのほかの役割はどうだろう。

 Webサーバーは、現在では基本機能といえるが、Windows Serverで標準的に使えるようになったのはWindows 2000からである。それ以前は、「フィーチャーパック」という名前で、無償ではあるが別途インストールする必要があった。ただ、Windows 2000のIIS(Internet Information Services)は、「明示的に指定しなくても勝手にインストールされる」ということでずいぶん批判された。IISに重大なセキュリティホールがあったのに、管理者はIISをインストールしたとは思っていなかったため、被害が広がったからだ

 ターミナルサービスも、昔はなかった役割だ。これを提供した最初の製品は、「Windows NT Server 4.0, Terminal Service Edition」、コードネームが「Hydra」で、別売りの製品だった。こちらもWindows 2000で標準機能に格上げされた。ちなみに、Hydra(ハイドラまたはヒュドラ)は、ギリシャ神話に登場する怪物で、9つの首を持つ。複数のユーザーを同時にサポートすることから名付けられたのだろう。本来、コードネームというのは、何を開発しているのか想像できないようにすべきだが、最近は予測可能なコード名も案外多い。

 逆に、以前は存在したが今日には存在しないサービスもある。たとえば、「Macintosh向けファイルサービス」やNetWareのサポートだ。Macintoshについては別項を参照してもらうとして、NetWareクライアントの機能はWindows NT 4.0に標準搭載されていたが、現在のWindowsには含まれていない。ファイルサーバーとしてのNetWareはすでに寿命が尽きたといえる。

 では、現在提供されているサーバー役割で、将来なくなるものはあるだろうか。筆者は、ルーティング関係のプロトコルが消えると予想している。実際、OSPFはWindows Server 2008から削除された。本来、ルーティングはルータの仕事であり、サーバーが行なう必要はない。もちろん、サーバーにルータの役割を追加できれば便利だ。しかし、独立したルータを持たない環境は、たいてい小規模サイトでルーティングプロトコルの必要はほとんどない。おそらくリモートアクセスの機能があれば用は足りるだろう。また、Windows Serverにはマルチキャストの中継機能がない。これを批判する人もいるが、中継についてはルータに任せて、WindowsにはWindowsの役割があるように思う。読者のみなさんはどうお考えだろうか。

Macintosh向けサービス

 ビジネスでMacintoshを使っている方は、デザイン系など一部の業界を除いて、少数派だと思う。実際、かつて話題になったアップルのテレビCMでも「Macは趣味、Windowsは仕事」という位置付けのものがあった。ちなみに、CM中ではWindowsのことを「パソコン」と呼んでいた。米国版のCMでは「PC」である。米国で「PC」というのは一般的な「パソコン」の意味ではなく、PC/ATアーキテクチャ系列のパソコンを指す(実際には、現在のPCはPC/AT互換ではない部分が多い)。Macintoshには、古くからExcelなどの優秀なビジネスアプリケーションがあったのに、現在、一部の業界を除いてあまり使われていないのはちょっと不思議である。

 マイクロソフトは、Macintosh市場で最大のアプリケーション提供者であることに責任を感じている、ということもないのだろうが、Windows Serverは古くからMacintoshをサポートしていた。特にWindows NT 3.5からWindows Server 2003までは、「Services for Macintosh (SFM)」と呼ばれるMacintosh向けファイルサーバー機能を提供しており、認証環境も含めた便利なシステムを構築可能だ。たとえば、Windows NTをサーバーに使えば、PCとMacintosh共通のアプリケーション(たとえばMicrosoft Office 4.2)では、どちらからファイルを開いても正しくアプリケーションが認識され、正常に編集できた。

 なお、Macintoshのファイルは、1つのファイルに「データフォーク」と「リソースフォーク」の2つの領域を持つ。データフォークが通常のファイル領域、リソースフォークにはアイコン情報などが格納される。SFMは、Windows ServerのファイルシステムであるNTFSのストリームという機能を利用することで、1つのファイルに2つの領域(正確には、リソースフォーク用の追加領域)を実現した。

 単一のファイルなので、Windows側でファイルをコピーしても、2つの領域が分離されてしまうことはない。Windowsアプリケーションはリソースフォークが格納されたストリームを認識しないので、リソースフォークが誤って壊されてしまうこともない(図3)。

図3●Services for Macintoshの仕組み

 他社のMacintosh向けサーバーは、2つのファイルで1つのMacintoshファイルを実現していたため、リソースフォークの消失トラブルがしばしばあったらしい。SFMのファイル構成はこうした問題が起きにくいため、評価は高かったようである。しかし、最近のMac OSはUNIXベースのものとなり、1つのMacintosh用ファイルを2つのファイルで実現しているという。これを見ると、SFMも無理に1つのファイルにまとめることはなかったのではないかと思う。

 さて、現在のMacintosh(Mac OS X)は、Windowsのファイル共有プロトコルSMBを標準でサポートするなど、Windowsとの親和性も高くなり(この点は知らない人が多いのか、テレビCMでも触れていた)、特別なサービスがなくてもMacintoshとの通信が可能だ。そのためか、Windows Server 2008にはMacintoshを直接サポートする機能はなくなっている。AppleTalkのサポートも消えた。しかし、Macintoshが使えなくなったわけではない。Windowsから歩み寄るのではなく、Macintoshから歩み寄ってくれたわけだ。

 本記事は、ネットワークマガジンにて掲載していた連載をまとめたものです。連載の一部は弊社刊行の書籍「Windows Serverマスターガイド」にも収録をしております。

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 また、月刊アスキードットテクノロジーズでは、2010年3月号より本記事の執筆者である横山哲也氏による連載「Windows Server 2008 R2運用テクニック」を掲載しております。最新のWindows Serverの情報に関しましては、こちらもご覧ください。

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