「CELLプラットフォーム」の威力炸裂!
高画質化や8番組同時録画などの機能の中心である「CELLプラットフォーム」は、テレビの全機能のほとんどをソフトウェアで処理している。同社の高画質回路「メタブレイン・プレミアム」は、映像処理やネットワーク機能などをそれぞれ専用のハードウェアで構成したものだ。CELL REGZAの場合は、むしろパソコンでテレビ録画などを行なう形に近い。
これは、ソフトウェアの更新によって新機能が容易に追加できることも意味する。たとえば、すでに発表済みのインターネットブラウザ機能。CELL REGZA用にカスタマイズされた「Opera」ブラウザーと、リモコンの「タッチパッド」機能は、来年1月予定のダウンロードによるバージョンアップで実装される。
買った後で機能が増えるAV機器としては、ゲーム機とはいえ奇しくも同じCELLを使った「プレイステーション3」がそれに該当するが、これまでは不具合の改善が主体だった薄型テレビとしては画期的だ。だから、ソフトウェア開発も苦労が多かったという。なにしろ、パソコンの世界でもマルチコア処理への対応が本格的に始まったのはほんの数年前。それとほぼ同じ時期に7つのコアで分散処理を行なうCELL用のソフトウェア開発をスタートしていたのだから、ノウハウも少なく、開発はかなり大変だっという。
CPUやソフトウェア開発に関してまったくの素人である筆者は、東芝が同社のAVノートパソコン用に開発した「SpursEngine」(スパーズエンジン)を使えば、「買える」CELL REGZAは比較的容易に実現できるのではないかと思い、実際恥ずかし気もなく聞いてみた。ちなみにSpursEngineは、4コア版のCELLと言っていいマルチプロセッサだ。実際に、同社のAVパソコン「Qosmio」シリーズでは、映像処理やエンコード処理など、テレビにおける高画質エンジンに近い使われ方をしている。
回答を言えば、それはないらしい。CELL REGZAのソフトウェアは7コア処理専用に開発されているので、「SpursEngine」を使うとなると、4コア処理用に新規にソフトウェア開発をしなければならない。このためコスト削減の効果はあまりないのだそうだ。
現実的にありうるのは、CELL REGZAの機能のひとつひとつを専用ハードウェアに落とし込み、現実的な価格のモデルに盛り込むこと。これは実はすでにREGZAシリーズで反映されている。たとえば「超解像技術」も、CELL REGZA開発で検討されていた高画質技術を先取りして、製品化したものだそうだ。
東芝は「メタブレイン」で半導体の力でテレビの実力を高めてきたが、この発想もCELL REGZAのソフトウェアの力でテレビを高度化するものとリンクしたものだったのだ。ちなみに、CELL REGZAではCELLプラットフォームの性能をフルに使い切っているそうで、特にデコード処理の負荷が大きいという。
それもそのはず、8番組同時表示のため、デジタル放送のハイビジョン映像を8つ同時にデコードしているのだから。個人的には、8番組同時録画よりも、8番組同時表示(デコード)の方が凄いと感じている。そのおかげで、アナログ放送のときと同じかそれ以上の瞬間的なチャンネル切り替えが実現できた。この快適さはすべての薄型テレビが将来的には必ず備えなければならないものだと思う。