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無線LANのすべて第9回

高速性と接続性に優れた新規格

MAC層から改良したIEEE802.11nの仕組み

2009年10月29日 06時00分更新

文● 的場晃久

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2009年9月に標準化が完了したIEEE802.11nは、高速化のために無線LANの下層部分から改良を加えている。前回はMIMOやチャネルボンディングについて解説したが、今回はMAC層の改良点を見てみよう。

MAC層の拡張

 これまでの無線LANでは、無線フレームと、Ethernetフレームが一対一に対応していた。この関係を変え、複数のEthernetフレームを1つの802.11フレームへとまとめて送信するのが「フレームアグリゲーション」である。これは、多数の細かなパケットを1つのフレームへまとめることで、送信待ち時間やACK待ち時間を減らそうという仕組みである。これには2つの方法があり、両者を併用することもできる(図1)。

図1 フレームアグリゲーションの種類

 1つは、複数のEthernetフレームの中からMACヘッダ以降のデータを最大8KBまで連結し、単一の無線フレームへ束ねる方法である。このフレームを「A-MSDU(Aggregation-MAC Service Data Unit)」と呼ぶ。

 A-MSDUには、802.11のプリアンブルや変調方式を指定するヘッダを含む無線ヘッダと、MACヘッダが各1つずつある。このため、通信の待ち時間などによるオーバーヘッドは少なくなる。しかし、誤り検出のためのFCS(Frame Check Sequence)も1つしかないため、エラーが生じればA-MSDU全体を再転送するしかない。また、A-MSDUは従来と同じ方法のACKで受信応答され、後述するブロックACKは使えない。

 もう1つの方法は、複数のEthernetフレームの中からMACヘッダとデータを含むMACフレーム作成し、64KBを上限に連結して送信するものだ。これを「A-MPDU(Aggregation-MAC Protocol Data Unit)」という。

 A-MPDUには無線ヘッダが1つだけだが、MACヘッダとFCSは個々のMACフレームごとにある。このため、A-MSDUよりオーバーヘッドが増えるが、エラー発生時にはエラーとなったフレーム部分の再送信だけで済む(ブロックACKを使う)。なお、A-MSDUにMACヘッダを付けたものを連結して、A-MPDUとして使うこともできる。

 加えて、オーバーヘッドの原因となるACKにも工夫がされている。それが「ブロックACK」だ。最大64KBの無線フレームに対して、一括して1回のACKで応答する。受信端末側の受信ステータスを示すビットマップを持つため、特定のフレームについて成否(エラーの有無)を通知することができる。

 これらの仕組みのおかげで、待ち時間を大幅に減らすことが可能になった。理論上のスループットは約500Mbpsとなり、11nの規定値である600Mbpsに対して約80%程度を実現できることになる。

 このほかにも、正式な規格の策定に向けて議論されている機能がある。たとえば「送信ビームフォーミング」は、送信時にアンテナ方向をコントロールして電波を効率的に送り、無線クライアントで各信号の位相が合うようにして受信信号の強度を最大化する技術である。

 これには指向性アンテナを代替するような働きがあり、これでアクセスポイントから離れた場所でのデータ送信速度を高められる。ただし受信側はアンテナを1つだけ使用するので、障害物や反射波がない環境で有効である。つまり、通常のMIMOのメリットがそがれてしまう使い方になる。また、位相の調整には送信側は受信側からのフィードバックが必要で、11n対応のクライアントのみが対象となる機能だ。

(次ページ、「下位互換とパフォーマンスの問題」に続く)


 

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