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制作現場で活きるワークステーション

不毛地帯はこうして生まれた

2009年10月26日 09時00分更新

文● 遠竹智寿子

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4年前では実現できなかった

 今回のシステムの導入価格は聞いていないが、市場での販売価格からざっと見積もって2000万円程度になると考えられる。実際には値引きなどもあるだろうが、ひと昔前を知っている業界関係者から見れば、これだけの内容がこの価格帯で実現できるという驚きがあるだろう。

 この数年のPCワークステーション製品の進化と、映像業界への貢献はかなり大きいのではないかと感じている。

取材先の制作現場で使われていたHP Z800 Workstation

 実は筆者は西遊記制作の際にも、冨士川氏、新井氏を取材した。取材の過程でそのときのエピソードを思い出した。

 レンダリング処理は、ほんの15年程前までは特別な作業だった。当時はPCワークステーションではなく、高価なメインフレームを利用していたが、レンダリング中にマシンが止まってしまうことも少なくなかったのだという。

 そこで「バグ」にかけた「虫よけ」の札を神社からもらってきて「落ちないように」とマシンに貼って祈っていた。今ではそれも「昔話」のひとつとなっている。

 冨士川氏は「ほんの4年前にさかのぼったとしても、今回のようなポリゴン数を処理することは物理的にできなかった」と話す。

遠山 「マシンパワーは、どれだけあっても足りない。贅沢な言い方だとは思うけれど、その時代において、あったらあった分だけクリエーター側は突き詰めて創るものです。スピードが速くなった時間分だけ、また違う部分に時間を回すでしょう」

ブレードを横から部屋全体で見たところ。かなり狭いというかぎゅうぎゅうの状態

 システムエンジニアの遠山氏は取材の中で、CG制作現場は省スペース化の問題にいずれぶち当たるだろうと予想して、2006年頃からブレードサーバのテストを実施していたと話していた。当時はスペックに対する価格が見合わなかったが、現在ではスペース効率が高く、ハイスピードなブレードシステムの導入が飛躍的に進んでいるのはご存じの通りだ。これも4年前には考えられなかったことだろう。

 このように最新の技術が用いられたドラマ不毛地帯。物語の面白さはもちろんだが、作品を支えるこういった要素にも注目しながら、観てみると面白いのではないだろうか。

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