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制作現場で活きるワークステーション

不毛地帯はこうして生まれた

2009年10月26日 09時00分更新

文● 遠竹智寿子

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窓外の景色は、すべてCG

 不毛地帯は、山崎豊子さんの長編小説が原作。525万部突破のベストセラーで、新潮文庫で刊行されている。

 旧日本陸軍エリートが終戦後、11年間に渡る過酷なシベリア抑留体験を経て帰国し、一転して総合商社というビジネスの「戦場」(商戦)で、世界を相手に闘うという壮大なストーリーを描いたものだ。

昭和の時代設定をロケで表現する、その時点でCGが必須になると冨士川氏

 通常こういったドラマでは、ある程度の大きさのフルセットを作って撮影していくのが一般的だ。しかし今回は、場所も時代も大きく移動する話なので、オープンセットというプランが現実的ではないという話になり、室内で進行されるシーン以外は基本ロケで進めているという。

冨士川 「ロケになった時点でCGが必須となります。その方向性が決まった時点で、覚悟を決めた」

 違和感のないシーンがCG合成後に可能かどうか、ロケハン(ロケーションハンティングの略/ロケ地を選定するための下見)に同行し、その撮影方法や段取りなどを検討、7月のクランクイン後の実際のロケにもすべて同行して、撮り方を指示したという。

冨士川 「監督の撮りたい映像が撮れれば一番良いのですが、やはりCGとの絡みで制約が出てくる。その際にこの場面では状況説明をしたいのか、心情を表したいのかといった映像意図を監督と詰めながら『アングルを変えてなら可能だろう』『カットを分割することで成立させよう』といった提案や、細かいやり取りをしつつ進めています」

 ドラマでは同じ山崎豊子原作の『白い巨塔』で、財前医師役を熱演した唐沢寿明さんが主役を演じている。

 開局50周年企画ということもあり、キャスティングも豪華だ。視聴者の関心もおのずと役者の芝居のほうに向かうだろう。しかし「目立たない」が難しいと冨士川氏は話す。背景が目立つのは、CGを交えた映像に違和感があるのと同義だからだ。

時代や場所ごとに異なる「街並み」の制作はレンダリングスピードを考えてmaxをメインで行っている

 例えば時代設定が昭和なのに、六本木ヒルズのような高層ビルが映っていていることはあり得ない。そのため室内シーンの「窓外」はすべてマット画も含めたフルCGとしている。また、街中で建物に入って行くシーンでは、人物の動きに合わせて3Dの背景が必要になる。このように、CGそのもののクオリティーだけでなく、シーン全体のクオリティーをどう上げていくかを想定して作業していくことが必須になる。

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