パソコン市場の低迷が叫ばれる中、着実にシェアを拡大しているのが日本HPだ。同社はWindows 7が今年後半のPC市場をどう変えるとみているのか? パーソナルシステムズ事業統括デスクトップビジネス本部 本部長 前田悦也氏と同マーケティングスペシャリスト 大久保 尚氏に聞いた。
今年7月、日本HPが、デスクトップパソコンの「東京生産」を開始してから10年が経った(関連記事)。同社昭島工場では、デスクトップからPCワークステーション、x86サーバー、ブレードサーバーが生産され、システムインテグレーションやラッキングまで幅広く手掛けている。
外資系企業ながら「国内生産=高信頼性」という効果が、ブランドイメージの向上に繋がってきているように感じる。ノートはまだシンガポール工場での生産だが、これは「一極集中して生産した方が、コストメリットが出てくると考えられている」ためだという。
ビジネスPC分野では4強の一角に
ビジネスPC市場における「ここ数年のシェア拡大」は、その結果の表れだ。特にデスクトップは、国内生産を開始した1999年当時8~9%程度だったものが、20%前後まで伸びている。
前田 「ビジネス向けデスクトップでは、5台に1台がHP製品という状況になりました。ビジネス向けノートもシェア11~12%を確保しており、合算すると15~16%程度のシェアになります。最近では、オンライン直販のHP Direct Plusを経由した中堅/中小企業向けの小規模案件に加え、官公庁などの大型案件も増えてきました。数年来強化してきた直販体制がうまく回っています」
ここで言う「直販」とは、オンライン直販とパートナー連携を組み合わせた「ダイレクトパートナービジネス」を指す。日本HPでは、同社製品の取扱代理店である「ダイレクトパートナー」や「ダイレクトリセラー」を通じて、「HP Directplus」の製品を購入できるという同社特有の販売形態を展開している。
これはパートナービジネス中心に進めて来た同社が、直販ビジネスを立ち上げるにあたり、パートナーとの共存を図るための戦略として打ち立てたものだ。現在ではパートナー経由の受注が7割を占めるまでに成長している。ちなみに「東京生産」は「5営業日納品」「カスタマイズPC」とともに、この直販ビジネスの売りとして開始されたもの。
世界規模のサプライチェーンの強みを生かす
法人向けデスクトップとして日本HPが扱うのは大きく分けて2種類。「HP Compaq Business Desktopシリーズ」の「5800系」と「7900系」だ。
価格訴求型の5800系では、ディスプレーとのバンドルで、性能と低価格を訴求している。7900系は、500人以上の中堅・大企業を意識し、セキュリティや運用管理機能を強化している。特徴としては、「ドライブロック機能」(ハードディスク・パスワード)や「TPM1.2準拠のセキュリティチップ、「vPro対応」のCore 2 Duo搭載などが挙げられる。
前田 「単純な導入コストだけではなく、ライフサイクルで見たTCOが求められています。目先のコスト削減ではなく、セキュリティや運用管理などが重視されているのです。大手法人で7000系の引き合いが強いのはその表れでしょう」
法人市場では、単に「低価格だから導入する」という考えは過去のものになってきている。日本HPとしても、世界市場で製品を展開する強みを生かしながら、継続的なスケールメリットを提供していく。同時に運用管理などプラスアルファの機能と、運用コスト削減に焦点を当てて差別化していく考えだ。
前田 「シェアについてはコストチャレンジを含めて、日々の細かいオペレーションの積み重ねが成果につながると考えています。“大きなマジック”はないが、今後も着実かつ継続的に伸ばしていきたいですね。国内ビジネスPCのベンダー別シェアでの“トップ3入り”が次のチャレンジです」
ラインアップについては、不必要にバリエーションを増やさない方向で、最適化を図っていくという。企業内のパソコン環境が標準化されていれば管理運用はその分だけ楽になる。また、500人以上の規模ではリモート運用を利用したTCO削減を訴求していく。
前田 「ミッドマーケットではすでにvProを訴求していますが、リモート運用に対するニーズは高く、今後も力を入れていきます。500人以上の規模では、クライアントオートメーション機能へのニーズも出てきます。この規模になると、更新作業の自動化などTCO削減のためのメリットが出てくると思います」

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