製造業の海外生産が定着した昨今、日本ヒューレット・パッカード(株)(以下日本HP)のデスクトップパソコンが、日本国内、それも東京都内で製造されていることをご存じだろうか?
HPは26日、国内生産10周年を記念して、東京都昭島市にある「日本HP 昭島事業所」(以下昭島工場)の見学会を開催した。そもそも日本HPが東京都内でのパソコン製造を始めたのは、1997年のこと、当時同社と合併前の旧コンパックが、あきる野市に持っていた工場で、法人向けデスクトップや直販専用モデルの生産を始めたのが始まりという。コンパックは2002年にHPと合併。その後2003年1月に現在の昭島工場に生産ラインを移設して、デスクトップパソコンやワークステーションの生産が始まったという。
現在の昭島工場では、完全注文仕様生産方式で個人/法人向けデスクトップやワークステーション、サーバー製品を、2シフト最大24時間体制で生産している。多品種/少量生産が特長で、注文のうち90%が5台未満、70%は1台での注文になっているという。ちなみに従業員はおよそ400~450名とのこと。
生産コストは高い それでも国内生産にこだわる理由
地代や人件費の高さを嫌い、国内の製造業が海外での生産にシフトしているのは周知の事実。それでもパソコンは、国内大手を中心に国内生産(組み立て)が比較的残っている分野かもしれない。
生産コストでは国内生産の方が分が悪いのは日本HPも同様だ。しかし同社は国内生産のメリットとして、以下の項目を挙げる。例えば海外で生産した場合、どうあがいても国際輸送が必要で、その分のリードタイムは長くなる。輸送期間を短くするには航空貨物での輸送が必要になるから、国際輸送のコストも馬鹿にならない。国内生産であればリードタイム短縮が可能になるし、国際輸送費も不要になる。
また、完成したらすぐに販売店や顧客に納品できるため、完成品在庫をなくせるほか、販売店側の在庫も少なくできるという。そしてもちろん、国内市場の品質要求に合わせた品質や物流の実現も、大きな利点だ。国内生産だからと言って、製品の価格が高いわけではないことは、関連記事にある同社デスクトップパソコンのコストパフォーマンスの高さを見れば一目瞭然。現在では法人向けデスクトップの国内シェアの20%近く、個人向けでも5%近くを確保して、まだまだ成長中ということだ。