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「MADE IN TOKYO」ではや10年 HPの昭島工場を見た

2009年08月26日 17時39分更新

文● 小西利明/ASCII.jp編集部

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 製造業の海外生産が定着した昨今、日本ヒューレット・パッカード(株)(以下日本HP)のデスクトップパソコンが、日本国内、それも東京都内で製造されていることをご存じだろうか?

日本HP 昭島事業所

日本HP 昭島事業所。4階建てで生産ラインは3階に、1~2階は事務棟と入荷/出荷作業エリア、4階は部材保管場

生産されたパソコンが出荷を待っていた

入り口駐車場の側には、この工場で生産されたパソコンが出荷を待っていた

 HPは26日、国内生産10周年を記念して、東京都昭島市にある「日本HP 昭島事業所」(以下昭島工場)の見学会を開催した。そもそも日本HPが東京都内でのパソコン製造を始めたのは、1997年のこと、当時同社と合併前の旧コンパックが、あきる野市に持っていた工場で、法人向けデスクトップや直販専用モデルの生産を始めたのが始まりという。コンパックは2002年にHPと合併。その後2003年1月に現在の昭島工場に生産ラインを移設して、デスクトップパソコンやワークステーションの生産が始まったという。

昭島工場の概要

昭島工場の概要。都内にはほかに物流拠点として倉庫が2ヵ所にある

昭島工場の特長

昭島工場の特長。生産しているのはビジネス/コンシューマー向けデスクトップとワークステーション、サーバーなど

昭島工場10周年を記念して、HP製のデスクトップパソコン15台を昭島市の図書館などに寄贈する式典も行なわれた。左写真の左端から、同社昭島事業所長の清水直行氏、同社取締役の岡 隆史氏、昭島市副市長の佐藤 清氏。右写真は寄贈されるデスクトップパソコン

 現在の昭島工場では、完全注文仕様生産方式で個人/法人向けデスクトップやワークステーション、サーバー製品を、2シフト最大24時間体制で生産している。多品種/少量生産が特長で、注文のうち90%が5台未満、70%は1台での注文になっているという。ちなみに従業員はおよそ400~450名とのこと。


生産コストは高い それでも国内生産にこだわる理由

 地代や人件費の高さを嫌い、国内の製造業が海外での生産にシフトしているのは周知の事実。それでもパソコンは、国内大手を中心に国内生産(組み立て)が比較的残っている分野かもしれない。

 生産コストでは国内生産の方が分が悪いのは日本HPも同様だ。しかし同社は国内生産のメリットとして、以下の項目を挙げる。例えば海外で生産した場合、どうあがいても国際輸送が必要で、その分のリードタイムは長くなる。輸送期間を短くするには航空貨物での輸送が必要になるから、国際輸送のコストも馬鹿にならない。国内生産であればリードタイム短縮が可能になるし、国際輸送費も不要になる。

海外生産と国内生産でのメリット・デメリット比較

海外生産と国内生産でのメリット・デメリット比較。品質や納期、在庫面での利点があるという

コスト比較

現在のモデルを国外で実現しようとした場合、15%程度のコスト高が生じるという試算

 また、完成したらすぐに販売店や顧客に納品できるため、完成品在庫をなくせるほか、販売店側の在庫も少なくできるという。そしてもちろん、国内市場の品質要求に合わせた品質や物流の実現も、大きな利点だ。国内生産だからと言って、製品の価格が高いわけではないことは、関連記事にある同社デスクトップパソコンのコストパフォーマンスの高さを見れば一目瞭然。現在では法人向けデスクトップの国内シェアの20%近く、個人向けでも5%近くを確保して、まだまだ成長中ということだ。

デスクトップの生産ライン

工場内部の様子。写真はデスクトップの生産ライン。6m程度の短いラインで組み立てが完了。同様のラインが4本ある

デスクトップの生産ライン

部品はいずれもバーコードで管理される。1ラインでの製造数は5000台/日

プリテストの様子

生産されたパソコンはすぐ隣で検査。写真はプリテストの様子で、各コンポーネントの動作確認を対話式で行なう。15~20分程度かかる

連続動作試験

プリテストを合格すると連続動作試験に。ノーマルなデスクトップでも2~3時間、長いものでは13~14時間程度かかる。この後、ネットワーク経由でのソフトウェアインストールに進む。オーダーによっては細かいOS設定やアプリケーションインストールもここで行なえる

振動試験の機械

インストール後に抜き取り検査も行なう。写真は梱包状態での1000km分のトラック輸送を想定した振動試験の機械。ほかにも漬け物石12kg分を乗せる過重テストもある

サーバーシステムの製造も

デスクトップだけでなく、サーバーシステムの製造も行なう。ラックに組み付けた状態まで完成させて出荷されるものも

システムインテグレーションも昭島工場内で実施

システムインテグレーションも昭島工場内で実施できる。写真はHPのエンジニアによるテストだが、顧客企業のエンジニアを招いての作業もあるとのこと。国内生産ならではの利点だ

製品の輸送に使うパレットは、なんと段ボール製! 一般的な木製パレットと違い、痛んでも分解してまた段ボールにリサイクルできるので、廃棄コストが0という

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