「EPSON」ブランドといえばプリンターで有名だが、PCへの参入は意外にも早く、国産初期のラップトップ「HC-20」やPC-98互換機、PC/AT互換機の海外向けビジネスなどを1980年代から手がけていた。現在は「Epson Direct Shop」として、Web直販中心のビジネスを展開している。直販専門といっても、そのサポート力は雑誌のランキングで1位になるなど定評がある。現在のPCビジネスは、1993年に設立されたエプソンダイレクトが担当し、同社内で製品の企画や技術サポートを行なっている。今回は、同社の取締役 事業推進部部長の河合保治氏に話を伺った。
個人向けの通販メーカーではない!?
エプソンダイレクトは、その名前の通り、PC直販のために作られた会社だ。1994年に最初の「Endeavor」シリーズを出荷しているが、この時点で(ホワイトボックスではない)メーカーによるPC直販はまだ珍しく、また直販のみという形態も少なかった。流通コストを省くことによる低価格化で競争していこうと考えていた。
当初からビジネスユーザーを想定はしていたが、広く一般ユーザー向けに販売していた。実際に直販を始めてみると、個人事業者やSOHO、小規模企業など、大手のビジネス向けディストリビューターがカバーしきれなかったビジネスユーザーの注文も増えてきた。1~数台というレベルでは、既存のディストリビューターや代理店などが要望に対応するのは難しく、個人事業者や会計事務所、SOHOなどの現場では、ビジネス利用でありながら、量販店で購入することを強いられるの現状だったわけだ。
しかし、エプソンダイレクトがBTOでのビジネスを開始すると、こうしたユーザーが多数集まってきた。たとえば、「CADを使いたい」が購入する台数は少なく、しかしPC自体の構成はそれなりにハイスペックが必要となると、量販店で扱う固定された仕様ではどうしても対応できない。現在同社の顧客は、個人事業主から小規模ビジネスに属するユーザーが最も多いという。
また、グループ会社のエプソン販売の法人営業部が大規模な顧客に対応している。プリンターやプロジェクターといったビジネス製品と一緒にPCを購入する企業もあるため、ビジネス向けのルートとしては、エプソン販売経由も少なくないという。
単にパーツを組み立てたわけではない?
Endeavorの裏側を見た
同社Endeavorシリーズには、テレビチューナーなどを内蔵した明かなコンシューマーモデルもあるが、多くの機種では明確にビジネス/個人向けを分けていないという。BTOの幅が大きく、また機種数も多いのでユーザー自身で適切なモデルを選べるためだ。「Windows 7優待アップグレード」についても、特にビジネス/個人向けを区別していない。
他社と同様、ビジネス向けではWindows Vistaのダウングレード権を使って最初からXPをインストールしたマシンも用意している。実際、ビジネスで利用されると思われるマシンの大半は、現状XPマシンが購入されているのだという。
メーカーのWeb直販が珍しくなくなった今でも、同社ほど幅広くBTOに対応するところは少ない。これについて河合氏は、「既存の(店頭販売)チャネルとの関係があるのではないか」と理由を分析する。また、日本でも外資系を中心にWeb直販をメインに行なうPCメーカーもあるが、「きめ細かいユーザーサポートという点で違いがある」と自信を見せる。
国内の多くのPCメーカーもそうであるように、エプソンダイレクトのマシンもエプソンが直接製造しているわけではない。しかし、製造メーカーに対して厳しい条件を出し、同社の基準に合う製品のみを販売・出荷している。これを実現しているのは、エプソン自体が精密機器(時計など)の製造メーカーとしてのノウハウや技術、検査体制を持っているためだ。
実際、長野県にある同社の拠点を見学させてもらったが、温度や湿度を一定にした試験室(4年以上ランダウンテストを続けているPCも!)、ノイズや電波放射などを独自に検査し、場合によってはCTスキャンで内部構造をチェックするなど、同社の基準を満たす努力がなされていた。
こうした技術的な背景があるため、たとえ故障や障害が報告されても、単純に部品を交換するのではなく、技術的に解析した上で最適な対応を行ない、即時修理・返送を行なう「一日修理」(後述)が実現できるのだという。この点が海外メーカーとは最も違う点だという。
事実、企業などでは単純な部品の故障なのか、使用環境などに依存する問題が発生しているのかという問題点の切り分けは重要だ。なぜなら、環境や利用方法に起因する故障であれば、その企業では、今後も同様の故障が続出する危険性があるからだ。

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