ATI編の1回目でも書いたとおり、2006年7月にATI Technologies社はAMDに買収された。そのため「RV500」世代のコアでも、後半に登場した「R580」とか「RV560/RV570/RV575」といった製品は、AMD製ということになる。しかし、これらはATI時代に製品化したコアの延長にあるから、AMD製というよりはATI製といった趣きが強い。
これに対して今回から紹介する「R600」世代は、完全にAMD製GPUになる。もっとも現時点においても、AMDとATIのテクノロジーは完全に融合したわけではなく、同じ会社の製品とは言え開発部隊は完全に分離しているし、製品投入サイクルもまったく異なっている。あえて「AMD製かATI製か」にこだわる必要はないのだろうが、一応今回からはATIではなくAMDと表記させていただく。
PCI-SIGの仕様をオーバーしていた
RADEON HD 2900シリーズ
さて、「RADEON X 1000」シリーズとして製品投入された「R500」シリーズに続いて、2007年から投入されたのが、80nmプロセスのR600シリーズのコアである。最初に投入されたのが、DirectX 10に対応したR600コアを用いた、「RADEON HD 2900」(関連記事)である。HD解像度をサポートすることを強調するためか、製品名称が「RADEON X~」から「RADEON HD~」に変わったが、これは単なる名称変更でしかない。
まず最初に投入されたのは「RADEON HD 2900 XT」で、これに続き10月(当初は9月の予定だった)に「RADEON HD 2900 PRO」が投入される。面白いことに、これまでPROグレードはXTグレードからパイプライン(DirectX 10だからシェーダー)を多少無効化することで性能のグレードダウンを図るのが一般的だったが、RADEON HD 2900 XTとPROに関して言えばシェーダー構成はまったく同じで、異なるのはコアの動作周波数のみとされた。
ちなみに価格面で言うと、当初の予想実売価格(米ドル)は、RADEON HD 2900 XTが249ドル(約2万2908円)、RADEON HD 2900 PROが229ドル(約2万1068円)で、あまり違いがないといえばない。ただ、一応両者には大きな違いがあり、RADEON HD 2900 XTは消費電力が150Wを超えるため6ピンのPCI Express電源コネクターが2つ必要なのに対し、RADEON HD 2900 PROでは一応150W未満に抑えられたため、6ピンコネクターひとつで済んでいる(XTと同じピン構成のカードもあり)。
また当初の計画では、RADEON HD 2900 PROでは消費電力削減のために、メモリーバス幅を256bitに減らす予定だったが、なんとか512bitバスを維持しても価格を抑えることができたようだ。ただ結果として、両者の区別が非常にわかりにくくなったのは間違いない。
余談であるが、この当時はまだPCIの規格作成グループ「PCI-SIG」では、「PCIe 225W/300W High Power CEM Specification」の仕様をまさに策定の最中で、この時点では150Wを超えるグラフィックスカードは公式には許されていなかった。そこで、PCIe 225W/300W High Power CEM Specificationの審議中の内容を先取りする形で、RADEON HD 2900 XTには6ピン+8ピン、RADEON HD 2900 PROには8ピンのコネクタが装備された。しかし、XTの6ピン+8ピンはいいとして、PROの8ピン×1という構成は完全に当時の仕様に違反したものだった。もっとも、実際には6ピンを接続して使えばいいので、あまり実害はなかったようだ。
2900 XT/PROに続いて、2007年11月にはシェーダーを320基から240基に減らし、メモリーバス幅も半減させた「RADEON HD 2900 GT」が投入される。性能が下がった分だけ、価格も199ドル程度(約1万8308円)まで下がっている。ちなみにこの予想実売価格は、(XTやPROもそうだが)GDDR3メモリーを搭載した場合。より高速なGDDR4メモリーを搭載したモデルは、+70~80ドルほど高価に設定されていた。
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