マーケティング上の理由で名前が変わった
RADEON HD 3000
RADEON HD 2000シリーズの発表からわずか半年後の2007年11月に、「RADEON HD 3000」シリーズが発表される。この世代の大きな特徴はDirectX 10.1への対応と、PCI Express 2.0への対応である。
最初にリリースされた「RADEON HD 3870」と「RADEON HD 3850」は「RV670」コアであるが、コアの番号からわかるとおり、これはR600のマイナーアップデートという扱いだ。実際シェーダー数などは、R600とまったく同じ。製造プロセスには台湾TSMC社の55nmを採用し、ダイサイズは408平方mmから192平方mmへと半減している。だが、消費電力との兼ね合いもあってか、動作周波数はそれほど向上していない。逆にメモリーバス幅が256bitに減らされたこともあり、アプリケーションによってはむしろ性能が下がるケースもあった。
とはいえ、プロセスを微細化しつつ動作周波数をほぼ一定に保ったこともあり、RADEON HD 3850ではついに厚さが1スロットに戻るなど、使いやすい製品になったことは事実だ。2スロット幅のRADEON HD 3870でも、消費電力低下に伴い排気ファンの騒音が確実に下がっている。多少でも静音性が増したのは歓迎すべきだった。
しかし、このシリーズにはいくつもの疑問が浮かぶ。
- なぜこんなに早く投入したのか?
- なぜ「RADEON HD 3000」ファミリーとしたのか?
これは、実はGPU以外の要素に関係している。2007年11月AMDは、「Spiderプラットフォーム」という名称で、以下のCPUやGPU、チップセットを発表した。
- Phenom X4 CPU
- RADEON HD 3800シリーズ
- AMD 790チップセット
ここでのアピールポイントは、ネイティブ・クアッドコアのPhenomと、PCI Express 2.0に対応したチップセット、およびこれに対応したGPUをまとめて新規提供するという点だ。そのため、これに組み合わせるGPUが「RADEON HD 2950」とかいう名称では、新規性が薄れると判断されたためであろう。
細かい点を挙げれば、HD-DVDやBlu-rayの再生に対応した第2世代UVD(Unified Video Decoder)の搭載や、新しいディスプレー出力規格、「Display Port」への対応といった違いはあるが、いずれも大きなインパクトを与えるものではない。プロセスの微細化を除くと、基本的にはRADEON 2000ファミリーと同じアーキテクチャーなのだが、マーケティング的にはやはり“別もの”としたかったのだろう。
もっともこれについては、NVIDIAも似たようなものだったことはすでに紹介したとおりである。むしろ、NVIDIAがいまでも「G80」の延長にある「G92b」コアの製品を製造していることを考えると、AMDの方がきちんとコアを切り替えていると言ってもいいのかもしれない。
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