実は老舗のATI Windows初期には苦戦も独自の機能で挽回
NVIDIA GPUに続いては、AMD(旧カナダATI Technologies社、以下ATI)のGPUについて語ろう。本稿では、2006年7月にATIがAMDに買収される以前についてはATI、それ以降をAMDとして表記する。
ATI Technologiesの歴史は、1985年の創立から始まる。同社は設立当初からグラフィックスカードを手がけてきたベンダーであり、まず当時のグラフィックス規格であるMDA/Hercules/CGAと互換性のある「Small Wonder」をリリース。これに続いて「EGA Wonder」「VGA Wonder」をリリースしたのち、大ヒットとなった「Mach 8/32/64」シリーズの登場によって、1990年代初期にMatrox社と並ぶ2大ハイエンドグラフィックスカードベンダーとしての地位を確立する。
日本で「DOS/V」とPC/AT互換機が普及し始めた1990年代前半といえば、ATIやMatrox以外にも、S3 Graphics社やWeitek社などのビデオチップメーカーがこのマーケットに参入していた。そんな状況で、Machシリーズは「DOSでは高速だが、Windowsでの性能がそれほど振るわない」として、次第に地位を落とし始める。
特にMachシリーズの後継として1995年から投入された「Rage」シリーズは当初性能がかんばしくなく、1998年から投入された「Rage 128」シリーズである程度ギャップを詰めたものの、当時のライバルだったNVIDIAの「RIVA TNT/TNT2」に並ぶところまではいかなかった。
ちなみに当時のベンチマークテストの結果を見ると、Rage 128やRage 128 Proは16bitカラーでも32bitカラーでもほとんど性能が変わらず、対してRIVA TNT/TNT2は、16bitカラー時の性能が32bitカラー時のほぼ倍という分かりやすいスコアだった。この結果、32bitカラーでは互角でも、16bitではRage 128は大差をつけられてしまうといった状況に陥っていた。
もっとも、こうした性能差があっても引き続きグラフィックスカードのメーカーとして競争力を持ちえたのは、いろいろな付加機能があったからと言える。まずRageシリーズの第3世代「Rage Pro」には、動き補正(Motion Compensation)のハードウェアが内蔵され、第5世代となる「Rage 128 GL」からは、動き補正に加えてIDCT(逆離散コサイン変換)のハードウェアも内蔵された。これらを使えば、CPUパワーが低くてもスムーズに動画再生ができる。
当時は「DVDをどれだけスムーズに再生できるか」がひとつのキーポイントだった。AthlonやPentium IIIでは、「これがソフトウェア(CPUパワー)だけで可能になる」というのが当時のうたい文句だったし、Chromatic Research社(のちにATIに買収)のメディアプロセッサー「MPACT」を使ったアクセラレーターカードを搭載するといった方向で解決していたパソコンもあったくらいだ。
一方、RageとATIのDVDプレーヤーを使うと、CPU負荷をそれほど高めずにDVD再生ができた。そのため、この目的でRage(および同種の機能を持つS3 Savage)を選択するというニーズは確実に存在した。グラフィックスカードにテレビチューナーを組み合わせた「All-in-Wonder」シリーズもかなりの人気で、3DゲームよりもテレビやDVD視聴を目的にしたマーケットでは、迷わずこちらを選択していた。
一方変わったところでは、Rage 128のあとに登場した「Rage XL/XC」はサーバー向けにかなりのシェアを確保した。またこの頃から、次第にマーケットが形成されてきたモバイル向けにも、いち早く「Rage Mobility」シリーズをリリースした。3Dゲーム向けという主戦場でこそNVIDIAに遅れを取ったものの、そのほかのマーケットを幅広く押さえることで、ATIはトータルで互角以上の戦いをしてきたといえる。
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