ライブ中継開始直前!
緊迫した「映像素材交換拠点」に潜入
奄美大島の魚眼カメラでの映像や各地の映像は「JGN2plus」というNICTの研究開発用ネットワークを経由して、「映像素材交換拠点」に集められる。イベント開演の10時に先立ち、ABCホールから数百メートル離れた所に位置する朝日放送の別館にある、この映像素材交換拠点にカメラが潜入できた。
映像素材交換拠点では、4K超高精細映像やHD映像、そしてワンセグ用映像までを統合的に扱い、大容量回線で効率よく配信することが可能になっている。これを実現するために「4K映像IPストリーミングシステム」や「4K非圧縮映像伝送装置i-Visto Gateway XG-1」、「HD非圧縮映像伝送装置 XG-2」、「広域自律分散マルチキャスト技術Flexcast」、「スケーラブル映像圧縮リアルタイム処理ソフトウェア」など、とにかくNTTが総力を挙げて伝送技術と製品を結集しているのが注目だ。
4K映像は4K映像IPストリーミングシステムにより、最大90Mbpsにまでリアルタイムに圧縮され、ネットワークに伝送され、さらにマルチキャスト技術Flexcastを用いて分岐される。こうして分岐された4K映像はそれぞれの会場で伸張され、ドームシアターで上映されることになる。
HD映像のほうはH.264でエンコードされ、映像素材交換拠点でいったん伸張。これをNTTのスケーラブル映像圧縮リアルタイム処理ソフトウェアで再圧縮をかけ、受信側ではHDとSDの解像度で取り出せるようにする。あとは4K映像と同じくマルチキャスト技術を用いて、多地点に配信し、HD映像はプロジェクタに、SD映像はワンセグで配信を行なう。これら映像素材は6本(6.6Gbps)の映像ストリームに集約され、14本の映像ストリームとして各上映拠点にマルチキャスト配信されるという。
さらに4K映像とHD映像は、NTTの「120GHz帯ミリ波伝送システム」を総務省認可の実験施設として利用し、ABCホールから約400m離れた大阪市立科学館に無線で伝送している。
一方、シスコはネットワーク機器やビデオ会議システムを提供。サーバ群やエンコーダなどの装置をCatalyst 3560-Eで束ね、上流のCRS-1にトラフィックを流す。また、朝日放送内と堂島のJGN2plusのアクセスポイント間はODAMというDWDM(高密度波長分割多重方式)装置を介して、10Gbpsリンクが多重化されているという。さらにビデオ会議端末やIP電話機も用意され、他拠点との円滑なコミュニケーションに利用されていた。
このようにバックエンドでは映像系、ネットワーク系の最新技術・製品が世界初となる超高解像度イベントを支えていた。あとから聞いたところ、前日までは紳士協定的に帯域を融通し合っていたのに、当日突然トラフィックが発生し、パケットロスが起こる事態がこのとき生じていたという。
(次ページ、これが4K映像を映し出す全天ドームだ!)
この連載の記事
-
第6回
ネットワーク
皆既日食超高精細映像ライブ中継を追う!【レポート編】 -
第3回
ネットワーク
いよいよ明日!皆既日食ライブ中継をシスコが支える -
第2回
ゲーム・ホビー
日食撮影用レンズフィルターをDIY! -
第1回
吉田“重”戦車の物欲機甲師団
日食の撮影方法 レンズ、フィルターなど機材は? -
トピックス
46年ぶりのダイヤモンドリング 撮る? 見に行く? - この連載の一覧へ