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松村太郎の「ケータイが語る、ミクロな魅力」第79回

「ケータイを読む」読書スタイルは定着するか?

2009年07月07日 16時00分更新

文● 松村太郎/慶應義塾大学SFC研究所 上席所員

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今週の1枚
【今週の1枚】au「biblio」。本屋、図書館という名前の端末は、横型フルスライドを採用し、本を読んでいる姿を再現できる端末デザインを目指した

 出版不況が叫ばれる昨今、著名な雑誌も次々と休刊に追い込まれている。ビジネスモデルの問題、消費者の紙離れなど、さまざまな原因が指摘されているが、ただ淘汰されるのを見守るだけでよいのだろうか。

 今回ご紹介するauの「biblio」という端末と「EZブック」というサービスは、雑誌まで含めた紙媒体の新しい展開を支えることになるのだろうか。

「紙よりケータイの方が読みやすいんじゃない?」

 6月中旬、僕が嘉悦大学で行なっている授業「情報メディア論」でテキストメディアを採り上げた。この中で、新聞や雑誌など紙媒体についてどう思うか、学生に課題で尋ねてみた。

 現在20歳前後の彼らは1990年代にさしかかる時期に生まれた世代。5才前後から家にパソコンとインターネットがあり、10才前後でiモードのサービスがスタート。そして実際に当人がケータイを持ち始めた頃にはすでに画面はカラーだった、そんな世代である。

 紙を評価する声もある。「紙は手に取ることができて、目に見える存在」「何千年もの間、文書が記録として残されてきたため、電気的にすぐ消えるデジタルデータには負けないでほしい」「特典やオマケなどのノベルティーが付いてくる点は、デジタルデータのメディアにはないよさだ」という意見が見られた。

 しかし実際にはポジティブな意見はごく少数。「印刷と廃棄にコストをかけていて合理性が低いんじゃないか?」「可搬性が悪い」「情報が遅い」というネガティブな指摘が多く、デジタル化してしまえばいいのにとダメを押される。非常に興味深かったのは、紙に対するポジティブな評価で「読みやすい」という意見がなかった点だ。

biblioのケータイケース 専用ケータイケースが別売で発売予定。ケースにセットしたままケータイの操作ができるうえ、ボタン操作やカメラも使える。しおりのようなデザインのケータイクリーナー付き

 カラーディスプレイが元からあり、日頃からカラフルな画面の文字に読み慣れている世代にとって、雑誌の白地に黒、あるいは新聞のグレー地に黒の文字は決して読みやすいわけではないとまで言うから、授業をしながら衝撃でクラクラしてしまった。

 印刷やレイアウトの世界は奥が深く、文字の並べ方、フォントの選び方、写真の置き方などで読みやすさや印象、目的までも変化する。僕も以前からMacにたくさんのフォントを入れており、プレゼンテーションやちょっとした画像を作るときに、それを選ぶ作業がまた楽しい。

 そんな話も、あまり共感を得られず、今日も彼らはケータイに内蔵されているフォントを眺めながら情報摂取に努めているのである。

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