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売上の8割を広告費へ!ハンガー店の無謀な挑戦 (2/2)

2009年06月25日 15時48分更新

文●三浦たまみ

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「毎日プレゼント」で閲覧数アップも狙う

 一見、無謀に思える200万円の広告出稿ですが、アクセス解析ツールを活用したWebサイトの改善提案などを行なう株式会社環の竹内亮介さんはこう話します。

「200万円かけたことで、それまで2万以下で推移していたメールアドレスの保有数は3万2000に増えましたから、まずはメールアドレスを取得するという長塩さんの狙いは当たったといえます。広告を出稿する際に最も避けたいのは、出稿した月だけアクセスが急増し翌月から一気に下がってしまうことですが、同店のアクセス数はほぼ右肩上がりで推移しています。これはメルマガからサイトへ誘導させるという一連の流れがうまくいっていることを示しています」

 また、竹内さんは、アクセス数に対して商品が売れる確率を示した「転換率」にも着目し、こう分析します。

「一般的には、アクセス数が増えると転換率も下がります。しかし『ハンガーのながしお』は、2004年当時の転換率を見ると1~2%を維持しており、広告費をかけた月も大幅に下がっていません。つまり、広告費をかけてメルマガ購読者を増やすだけでなく、そこからしっかりと購入に結びつけているのです」

 長塩さん自身も、メルマガが自社の売り上げの大きな柱を占めているといいます。

「メルマガをきっかけに商品を購入してもらおうと、手頃な価格で購入できる商品を掲載するなど工夫しています。広告を出稿すればOKではなく、その“後”いかに地道な努力を続けられるかが、最終的に売り上げという結果に反映されるのだと思います」

 また長塩さんは、広告を出稿するだけでなく、2005年からは以下のような「毎日プレゼント」企画をサイト上で実施しています。

ながしお

「ハンガーのながしお」が実施した毎日プレゼント


「閲覧数アップの対策として始めました。懸賞にしてもプレゼントにしても、その要素だけで購入に直結させることはできませんが、その後、いかに興味の持てるメルマガを発行できるかによって、意味のあるものになると思います」

 スパムメールの増加などによって、メルマガを発行しても開いてもらうことすらできないと嘆く店主が多いのも実情ですが、「タイトルやメルマガの内容を工夫することで、クリック数は確実に変わります。どんなにスパムが増えても、メルマガを発行することについて、どのネットショップもコンサルタントも否定しないのは、やり方によっては確実に効果が期待できるから。メールアドレスの取得が目的の広告出稿は、その月だけで結果を判断せず、長期スパンで購入に転換していく計画を立てる必要があるといえますね」(竹内さん)。

 ただし、とくに楽天市場やヤフーなどの大手モールに出店する店舗では、事業規模や売上、利益を見比べながら投資計画を整えていかなければ、広告費のために赤字となりやがては閉店というケースもあります。投資した分が即、回収できるほど甘くはないことは頭に入れておくべきといえるでしょう。


 『ハンガーのながしお』の場合、売上の要ともなるメールマガジンについて開封率をあげるための見出しや読者メリットの充実などさまざまな工夫を凝らしています。次回はこのあたりの取り組みを紹介します。


――ネットショップのエキスパートが斬る!――

顧客獲得費用より顧客がもたらす利益を見極めたい

 広告費をかけるときは、「お客様を獲得するのにかかる費用」と「お客様が生涯に渡ってお支払いいただける利益」との関係で判断すべきと言えます。極端な例ですが、100万円の広告費を使ってメルマガ読者を1人しか獲得できなくても、その1人の読者が長年にわたって200万円の利益をお店に提供してくれたら、それは「広告を出稿した価値があった」ことになります。

 こうした利益が見込めるのであれば100万円の広告は出し続けるべきですし、見込めないのであれば出稿するべきではありません。懸賞目当ての人を、メルマガを活用して購入に結びつけるのは有力は販促方法の一つではありますが、効率は以前よりは確実に落ちているので、投資した分を回収できるハードルは確実に上がっています。


森本繁生:有料会員制協業事業フォーラム「オンラインショップマスターズクラブ」運営。ブログ「森本繁生のEC道



協力:佐川フィナンシャル株式会社(http://www.sagawa-fin.co.jp/

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