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先行者利益よりも独自性、ベビー用品店の型破りな開業法 (3/3)

2009年05月28日 13時00分更新

文●三浦たまみ

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“経験値”が、商品開発の大きな武器に

 藤原さん姉妹が手作りサンプル品をいくつも作ってやっとたどりついたのが、バックル式のスリングでした。

「リング式のように洋服を“脱ぐ”ような感覚ではなく、ワンタッチで“外す”ようにできたならスリング初心者も簡単に使いこなせると思いました。抱いた赤ちゃんと密着するFITテープをつける、使わないときは収納ポーチになるなど、あったら便利と感じた機能もすべて取り入れました」

 宮下さん自身が子育て中に感じた不満を解消することは、そのまま、現在、子育て中のお母さんの不満を解消することに直結します。この“超機能的商品” は、1商品だけで5件の特許を取得した自信作となりました。

 このスリングは今でこそ工場の生産ラインに乗りましたが、個人レベルでこだわりのある製品を作るとなると、最初の壁は「どこにお願いすればいいか」ということでしょう。

 藤原さんの場合、開業を思い立った当初はネットや知人のツテで探し当てた工場に依頼しましたが、製造工程の複雑さゆえに断られ、縫製のプロに内職をお願いして販売にこぎつけた経緯があります。この妥協しないモノづくりのおかげで、開業5年が経過した今も他店にマネされることはありません

藤原さんが開発したバックル式スリングは、バックル(写真左)、FITテープ(同中央)、収納ポーチ(同右)など、計5件の特許を取得。初心者の使い勝手を追求して製作した


 『Happy!hughug』のように、直輸入すれば先行者利益を得られる立場であっても、あえてオリジナル商品で勝負する――。スピード重視といわれるネット業界で、商品力がいかに大切かを物語っていると言えます。

 とはいえ、どんなにいい商品でも開業当初から変わらなければ、時流から取り残されることがあります。次回は、同店の商品がいかに改良されていったのかを見てみましょう。


――ネットショップのエキスパートが斬る!――

“ネット外”に誘導する意識を持とう

 商品開発とマーケティングはビジネスの両輪。両方やらなければならないことですが、仕入れの実績を積んだお店がその取引先とオリジナル商品を開発できれば、競合店を一歩リードできることは言うまでもありません。

 売りたい商材をいかに見つけるか――これは、非常にシンプルです。売りたい商材が「好きかどうか」です。仕事だからと義務感でやっているネットショップの担当者は案外多いと思いますが、こういう姿勢では商品の目利きも育ちません。『Happy!hughug』のように、商材に対する思い入れの強さこそが、繁盛ショップの原動力になると言えるでしょう。


森本繁生:有料会員制協業事業フォーラム「オンラインショップマスターズクラブ」運営。ブログ「森本繁生のEC道



協力:佐川フィナンシャル株式会社(http://www.sagawa-fin.co.jp/

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